実際、岩田さんは高校を卒業して慶應義塾大学に入学したのですが、そこでまずは法曹界を目指して法律関係のサークルに入ったそうです。しかし、ほかの優秀な同級生を見て自分が弁護士・検事になることを断念。代わりに、サークルの代表として組織を取り仕切ることに専念しました。そこで組織を動かす面白さを知った、と言います。

「真吾君っていつまでサラリーマンをやっているのかな」

さらに岩田さんは大学を卒業後、三菱商事に就職します。「三菱商事に入社したときには、親父は僕がもう戻ってこないだろうと思ったでしょうね」と当時を振り返ります。

三星グループ 代表取締役社長 岩田真吾氏

実際、岩田さんは三菱商事に2年間勤めると、今度はボストン コンサルティング グループ(BCG)に転職し、そこで3年働きます。このように、大手商社と外資系コンサルティング企業で働き、マクロな視点でビジネスを見られたことは、岩田さんの大きな糧になっているはずです。まさに「知の探索」です。

そして27歳のとき、岩田さんはいよいよ家業を継ぐことを決意します。その決断のきっかけを与えたのは、奥様の一言だったそうです。

「僕が27歳のときに、妻から『このあいだうちのパパが、真吾君っていつまでサラリーマンをやっているのかな、って言ってたよ』と聞かされたんです。妻も経営者の娘なので、それは何気ない日常会話の1つだったのですが、ハッとしました。僕もどこかでサラリーマンのまま30歳になったらダメだと思っていたので、『何かチャレンジするには3年かかる。今がちょうどそのときだな』と思ったんです」