「ネット右翼」の平均年齢は40代前半

小学校の道徳教科書には、時代を反映してSNSを題材とした教材が盛り込まれている。学校図書(5年生)の教科書には「自分や相手の顔が見えないやりとり」として、次のような設問が立てられている。

『危ない「道徳教科書」』(寺脇 研著・宝島社刊)

<いつでもどこでも友達と交流できるSNSは、とても便利ですが、思わぬごかいやトラブルにつながることがあります。自分の都合だけでなく、受け取る相手の立場に立って、楽しく正しく利用しましょう。文字だけのやりとりだからこそ、どんなことに気を付けたらよいか、考えてみましょう。>

ネット上における誹謗中傷や悪意のもとに行われる情報発信は、しばしば社会的な問題にもなっている。「近頃の若いやつは……」と眉をひそめる向きもあろうが、実はこうした問題の当事者となっているのは、子どもたちではなく、40代以上の中高年に多いことが分かっている。

若手評論家、作家の古谷経衡は著書『若者は本当に右傾化しているのか』(アスペクト)のなかで、いわゆる「ネット右翼」と呼ばれる人々の平均年齢を「38.15歳」と推測している。これは2013年の大規模調査による数字で、状況が大きく変わっていなければ、5年後の現在は40代前半が平均値ということになる。

また、2014年10月に『毎日新聞』が公表した読書世論調査では、16歳以上の男女3600人に聞いたところ、「嫌韓・嫌中」本やマスコミ、ネットなどで関連記事を読んだ層(全体の10%)のうち、45%が60代以上で10代後半は3%、20代は8%にすぎなかった。

エリート官僚も「事件」を起こす

もちろん、調査の方法によって数値の傾向は変わってくるだろう。それでも、ネット上でイデオロギー論争を繰り広げたり、攻撃的な主義主張を繰り広げたりする層の中心が、中高年であることはほぼ間違いないようだ。ネットでなくても、「LGBTのカップルには生産性がない」とか、肺がん患者の国会での訴えに「いいかげんにしろ!」とヤジを飛ばすとか、セクハラ撲滅を訴える議員たちを「私にとって、セクハラとは縁遠い方々」と揶揄するのはみな、中高年の議員の暴言だ。テレビ局の女性記者に対し信じられないセクハラ発言をしたのも、還暦間近の高級官僚である。

2013年には、総務省から復興庁に出向していたキャリア官僚(当時45歳)が、ツイッターで「皆で福島に行ってしまえば、議員対応も法制局対応も主計対応もできなくなるから、楽になりそうだ」「左翼のクソどもから、ひたすら罵声を浴びせられる集会に出席。不思議と反発は感じない。感じるのは相手の知性の欠如に対する哀れみのみ」などと発信していたことが報じられ、停職処分を受けた。

この官僚を知る人々は、各紙の取材に対し「普段は丁寧で腰が低い人物で驚いている」と証言しているが、知識や学力は十分にあるはずのエリート官僚がこうした考えられないような「事件」を引き起こすのは、ある意味不思議なことではない。それは、どんなに高学歴で広範な知識を持つ人物であったとしても、どのように生きるべきか、どう行動すれば美しい人生なのか、そうした判断力は、知識とはまた別物なのである。