地方歴史編
「本丸を攻めるぞ!」という視点ひとつで具体的に観察できる

なぜ、こんなことを人間はするのか

歴史など人文系については2つの視点から考えてはいかがでしょうか。ひとつは「歴史の面白さを知る」、もうひとつは「社会課題について思考する」。

前者については、『城の攻め方・つくり方』(中井均監修/宝島社)などの本を参考に、城の本丸を攻めるつもりで見学するのがお勧めです。私も子どもを連れて実践してみました。盛り上がります。城は全国各地に存在していますので、アクセスしやすいのも魅力。お金だってあまりかかりません。

城に着いたら「本丸を攻めるぞー!」と声を上げてスタートしましょう。子どものワクワク感が高まり、ノリノリになります。「そんな歩き方をしていたら、物陰から敵が出てきて後ろから斬られちゃうよ」などと会話も弾みます。

城には区切られた空間が複数あることによって、侵入する敵を少しずつ減らす構造になっている。石垣の勾配で敵の侵入を防いだり攻撃しやすくしたりしているなど、イラストで見るのとは違い実感を伴うので、歴史を身近なものとしてとらえられるようにもなります。「攻める」というひとつの視点を持つだけで、城を具体的に観察するようになるわけです。一方、「立派なお城だね」と漠然としかいわない親に連れられていっても子どもの印象には残りません。

「あらゆるものには功罪の両面がありうる」

高学年なら「人間は、なぜこんなことをしてしまうのか」という社会課題と向き合うことも大切です。たとえば「水俣病資料館」を訪ねるのもいいでしょう。大切なのは、善悪という二値的な判断をすることではありません。「あらゆるものには功罪の両面がありうる」という認識を養うことです。

悪人と見られている人だって、本当は、お金を儲けて家族の喜ぶ顔が見たいと考えていただけかもしれない。子どもがいろいろな方向から、多角的に考えるようになれば、精神的にも大人へと成長するきっかけになるでしょう。「どうして?」という想いが痛切に心にひっかかり、“考える”ことの大本が育まれるからです。そうした経験の積み重ねは、読解力や思考力を伸ばすうえでも欠かせません。

中学生になると、子どもも忙しくなって一緒に出かける機会も減ります。「これが一緒に出かける最後のチャンス」という覚悟で、親から子へ、問題意識の持ち方や身の回りにある物事の面白がり方を伝えてほしいものです。