どんなトラブルが多く、どう対応すればいいのか。アンケートで集まった具体的な事例を参考に、森田弁護士に解説していただこう。1位となった「兄弟姉妹間の遺産分割の割合によるトラブル」については、さまざまな実例が寄せられた。被相続人と近い場所にいた、面倒を見ていた人が有利になるという話は多い。
「相談者は60代の男性で、被相続人の次男。遺産を管理している長男が遺産分割協議書を作成したところ、長男に有利な内容であった」(弁護士・三重県)
音信不通のきょうだいが突然現れて遺産分割を要求するケースもある。
「根本的な解決方法は、被相続人が遺言書を残すことです。自筆証書遺言では、『すべて内縁の妻に与える』など、その他の相続人の遺留分に配慮していなかった場合、『そもそも父は認知症だったのではないか。書かされたのではないか』という理由で、相続人が遺言の無効を主張する可能性があります。きちんと公証役場で公正証書遺言を作ることが大切です」(森田弁護士)
2位に挙がったのが、「使徒不明な消えた遺産に関するトラブル」だ。
親が認知症で、きょうだい間に生じる疑心暗鬼
認知症を患ったり、寝たきりになるなど、財産管理能力が衰えた親の通帳・カードを親しい家族が預かる。よくある話だ。しかし、その状況では誰が、何のために預貯金を引き出したのか、使途を正確に判断するのは難しい。
「相談者の両親は地方の実家で生活。相談者の妹夫婦が同居していた。
両親が相次いで死亡。それぞれ亡くなる前の数年は寝たきりだったが、通帳を調べると7年あまりで数千万円が支出されていた」(梶村龍太弁護士/アサヒ法律事務所)
厄介なのが、「預貯金通帳を見ると、数十万円単位で下ろされていた」(弁護士・東京都)などのように、少額を徐々に引き出しているパターンだ。「生活費を親の代わりにATMで引き出した」と言われれば反論は難しくなる。
「親の管理能力がないことを証明するには医療記録などの間接事実を積み重ねるしかない。しかし、相続人を訴える側は傍にいなかった人間のわけですから、立証するにも厳しい立場です」(森田弁護士)
どんな対策が有効か。「判断能力に問題がある両親の財産の管理については、後見人制度で、専門家である第三者を後見人につけたほうがいいでしょう」(森田弁護士)。