3位には「寄与分に関するトラブル」が入った。寄与分とは、親の看病をしていたなど、親の財産の維持または増加に寄与するような貢献をした相続人がいる場合、遺産分割のときに評価しなくてはいけないという制度のこと。親の介護が必要な状況が増え、寄与分の訴えも増えている。だが、介護をしても、「扶養の範囲」とみなされると、寄与分は認められない。

「依頼者は、夫の両親の介護を15年間したが、夫の両親の遺産相続の際、寄与分をまったく考慮してもらえなかった」(大和幸四郎弁護士/武雄法律事務所)

どんな場合に認められるか。

「基準としては、被相続人が要介護2以上の状態であることが1つの目安になります。例えば、ヘルパーさんを雇わないといけないのに、雇わずに自分で介護をした。その分浮いた費用を寄与分として評価する。寄与分とはそのような制度です。ですから、週末だけ介護するというレベルでは難しい」(森田弁護士)

借金、ゴミ屋敷、色恋沙汰もトラブルの種に

4位には、「特別受益についてのトラブル」が挙がった。特別受益とはどんなものか。

「きょうだいのうちひとりだけが、扶養のレベルを超えた経済的な支援を受けていたケースがあります。そのときに受けた利益のことを『特別受益』といい、それを勘案して、遺産分割する必要があるのです」(森田弁護士)

よく争われるのが、不動産購入資金や結婚式費用、学費の援助だ。

「相談者は、きょうだいに母の遺産分割を請求したが、妹は『相談者は結婚の際に結納金や結婚式代金、新婚旅行の費用、新築建物の資金を親に出してもらっているので、それらは特別受益として考慮されるべきである』として、なかなか同意しない」(有満俊昭弁護士/さいたま新都心有満法律事務所)

森田弁護士によると、援助額が合計で100万円以上になると、トラブルは起こりやすいという。

5位の「長年相続手続きがされておらず、複雑になっている事例」は、どんなものか。

「相談者は80代男性。祖母名義の農地があるも祖母は昭和20年代に死亡。相続登記されないままであったところ、数次相続が発生し相続人が50人以上に増えてしまった」(弁護士・山梨県)

森田弁護士も苦笑して言う。

「相続人が100人以上という不動産もあると聞きます。不動産が特定できている場合には、戸籍を取り、登記の名義人を追っていくしかない」

知らない間に親が借金をしていたら、どうすればいいか。

「多額の借金は相続放棄をおすすめします。金融機関から借りていたお金は、督促通知が送られてくるので、相続人が気付かないという例はあまりありません」(森田弁護士)