実家を売ろうにも売れない時代が数年後にはやってくる。不動産が「負の遺産」になる時代とは。早めにきちんと対処しておかないと、とんでもないことが起きるかもしれない。
売ろうにも、売れない時代がきている
今から50年ほど前の高度成長期、地方から都会へ働きに出た農家の次男坊三男坊にとって、郊外にマイホームを持つというのは夢だった。必死に働きローンを支払い、両親がやっと手にした念願のマイホーム。
そんな実家を相続するとなったとき、不動産というだけでそれなりの資産価値がある気になるのも無理はない。しかし、これからの時代、それはむしろ「負の遺産」、不動産ならぬ「負動産」という重荷になるかもしれないのだ。不動産コンサルタントの藤戸康雄さんに聞いた。
「数年すると、団塊の世代が後期高齢者になります。彼らが住んでいるのはたいていベッドタウンの持ち家です」
都心から電車で小1時間。そこからバスで10分にあるニュータウン。敷地に余裕があって緑は多く、近くには商店街も学校も病院もある。エレベーターはない5階建てでも、若いときには苦にならない。1970~80年代、そんなニュータウンは子育てするのにはいい環境だった。
しかしときは巡り、ニュータウンで育った団塊ジュニアも40代。すでに独立し、自分で家を購入したり、通勤に便利な町に賃貸で暮らしていたりするから、今さら古くて不便な実家に戻ろうとは思わない。
「そんな中古物件が大量に市場に出てきます。全住宅流通量に占める中古住宅の割合は約15%にすぎません。これまで人口が減っても世帯数は増えていましたが、2019年をピークに日本の世帯数は減少するので住宅需要は減ります。それでも新しく家は建てられます。新築が増え、買う人は少なくなるのですから、古くて不便な物件を売ろうにも、売れない時代がきているのです」