東日本大震災復興需要やオリンピック需要による極端な人手不足は建設費の高騰を招いた。建設費が高騰すれば、新築住宅価格も高くなる。

「新築物件の分譲価格が高くなると、不動産が上がっていると勘違いしがちですが、土地の価格が上がっていない場所でも、建設費の高騰で分譲価格が上がっています。それが復興需要やオリンピック需要で不動産が上がっているという幻想を生んでいるのです。

東京ドーム約2200個分が一気に市場に出てくる

現在は新築マンション価格が高止まりしているために中古マンションも高止まりしていますが、ピークを過ぎれば、新築物件の価格は下がり、自ずと中古物件の価格も下がります」

大都市圏の住宅地の大幅下落をもたらす時限爆弾のような要因がもう1つある。「22年問題」と呼ばれる生産緑地法の改正だ。92年、市街化区域にある農地は宅地化農地と生産緑地に分けられた。

「生産緑地に指定されると固定資産税が極めて低くなるとともに、相続税の納税を猶予されるメリットがありました。メリットを受けるには30年間農業を営むことが義務だったのですが、三大都市圏の生産緑地、約1万3000ヘクタールの8割がオリンピックの2年後に30年目を迎えるのです。細々と農業をしていた人も高齢化し、後継者もいないため、東京ドーム約2200個分の土地が一気に市場に出てくると推測されています」

これだけの土地が市場に出れば、ますます売るのは難しくなる。しかし、空き家のままにしていても固定資産税は永遠に支払わねばならない。マンションならば加えて管理費もかかる。火災保険改定で築20年以上の物件の保険料が大幅に値上げされたため、管理費も急上昇している。恐ろしいのはそれだけではない。

「マンションを相続したものの、すでに行った大規模修繕工事で修繕積立金をすでに使い果たしていたとしたら、誰も住んでいなくても、新たに行う大規模修繕工事の際に『各戸あたり200万円拠出してください』と請求される事態も起こります」