不動産は捨てられないから実に厄介

まさに負の遺産。相続しなければよかったと思っても、不動産は所有権を放棄することができない。相続放棄をするとしても、相続財産管理人の選任の申し立てをせねばならず、これはこれで費用がかさむ。では、どうするか。

「人口減少社会では不動産は上がるのはもちろん、横ばいという物件ですら限られています。安くても売れるものは今のうちに売っておくのが基本的な考え方です。語弊はありますが、タダでも引き取ってもらったほうがマイナスにはなりません。まずは相続するのがどういう不動産なのか、資産として知ることです」

藤戸さんは相続する物件を4つのカテゴリーに分けて考え、選択することを勧める。

「まずは<住む>という選択肢。バブルの頃に1億円以上した一戸建てが、今では3000万円という物件が都心にはたくさんあります。でも相続税の評価額はそれほど下がっていない。そんな一戸建てを相続する方は、生前から親と同居していれば小規模宅地等の特例で課税評価額が80%引きになりますから、将来売るとしても、相続税は節税できます。

次に<売る>という選択。これは先ほど申し上げたように、できるだけ早く売ってキャッシュにすることです。でも、なかなか売れないときは<貸す>ことも考えてみましょう。

特に木造家屋は誰かが住んで使い続けていないと老朽化が進みます。賃借人から雨漏りを修理してくださいなど、いろいろな要求もあり維持管理費はかかるかもしれませんが、住んでいなかったら雨漏りにも気付かず余計に家の状態は悪くなります。

売るにしろ貸すにしろ、広いマーケットでは誰も欲しくなさそうな物件でも、その地域内では需要がある場合があります。隣の家が空き家では物騒だから、格安なら息子に売ってほしいだとか、近所にアトリエが欲しかったという需要です。この辺は人づての情報が重要になります」