全世界で拡大を続けるアマゾン。利益の薄い小売業なのに、年1兆円超という巨額の設備投資を続けられるのは、なぜなのか。元マイクロソフト社長の成毛眞氏は、アマゾン以外の業者でも出品できる「マーケットプレイス」の売り上げ処理の仕組みに、強さの秘密が隠されていると指摘する――。
※本稿は成毛眞『amazon 世界最先端の戦略がわかる』(ダイヤモンド社)の一部を抜粋・再編集したものです。
アマゾンのキャッシュフローを読み解く
次の図を見てほしい。これは、アマゾンの「純利益」「営業キャッシュフロー」「フリーキャッシュフロー」「売上高」などをまとめたものだ。この4つの点から見れば、その企業が読み解ける。
まず見るのは、営業キャッシュフローだ。営業キャッシュフローとは、単純に売上から仕入れを引いた値だ。ここから、本業が生み出す現金がいくらなのかがわかる。つまり、アマゾンは、右肩上がりに成長しているし、本業がきちんと現金を生み出している。
フリーキャッシュフローとは、営業キャッシュフローから、事業拡大に必要な設備投資などの投資を引いた数値である。つまり、これがその会社がこれから自由に使えるお金だ。借金の返済、社債の償還(しょうかん)、株主への配当など、必要なものを払ったあとのお金のことだ。企業が自由に使えるお金のことだからフリーキャッシュフローと名付けられた。
アマゾンは、フリーキャッシュフローも2009年度までは営業キャッシュフローに比例して伸びているが、注目すべきは2010年度から12年度にかけて減少している点である。もちろん営業キャッシュフローは伸びているのに、2012年度にフリーキャッシュフローは、激減している。
つまり、この時期にアマゾンは、本業で稼いだ営業キャッシュフローのほとんどを投資に回しているということだ。その金額は日本円で数千億円規模と、小売業にしては想像を絶する金額である。