じつは、これはアマゾンのみの専売特許ではなく、他のグローバル企業もこの「打ち出の小槌」を持っている。米アップルの「App Store」や米グーグルの「Google Play」などのアプリも同じような仕組みだ。とはいえ、2017年のApp Storeの売上は約265億ドルなので、2013年時点のアマゾンの半分以下である。アマゾンに比べてぐんと規模が小さい。

キャッシュ先取りで積極投資

ウォルマートも遅ればせながらマーケットプレイスを開設している。これもアマゾンのからくりに気づいたからであろう。ちなみに、楽天をはじめ日本企業はやっていない。日本企業が、馬鹿正直に良い物を作り、設備投資に回してまた良い物を作っている間に、海外の大企業はこのような仕組みでキャッシュを手に入れているのだ。

また、アマゾンのCCCがマイナスの理由としてよく聞く仮説が、アマゾンが圧倒的な商品購買力を盾に、直販分の仕入れ先への代金の支払いの期間をかなり先に設定しているのではというものである。当然その間にキャッシュが使えるというわけだ。しかし、「いくらアマゾンでも、すべての取引先にそこまで飲ませられるか」とも思う。

アマゾンはCCCのマイナスの要因については一切語っていないが、マーケットプレイスに積極投資を可能にした金脈があることは間違いなさそうだ。

(*注1)『ダイヤモンド・チェーンストア』、鈴木敏仁「アメリカ小売業大全2013」(2013年10月15日号)

成毛眞(なるけ・まこと)
書評サイト HONZ代表
1955年、北海道生まれ。中央大商学部卒。マイクロソフト社長を経て投資コンサルティング会社インスパイアを創業。書評家としても活躍。著書に『黄金のアウトプット術 インプットした情報を「お金」に変える』『成毛流「接待」の教科書 乾杯までに9割決まる』『AI時代の子育て戦略』など。
(写真=iStock.com)
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