【藤井】グローバルビジネスとしての側面が歯止めをかけるのはおっしゃる通りでしょう。一方で、世界の状況を見ると、今のグローバリズムは内向きの動きがあります。ヘイトスピーチやアメリカ・ファースト、ポピュリズムのようなものがスタンダードになりつつあることは注視しないといけないでしょうね。

ただ日本のインターネットでは今まで右翼的なものが優勢でしたが、ここ1、2年でアンチ・ヘイトスピーチのカウンター的な流れも力を持つようになってきました。RADWIMPSが叩かれ、謝罪することになったのもそれと関連があるのでしょう。

「記号の時代」と動員の構造

【辻田】最近はネトウヨ動画がBANされる事例がありましたよね。

【藤井】「BAN祭り」ですね。

【辻田】保守系まとめサイトの広告を停止するように働きかける動きもネットから生まれました。

【藤井】今までネット右翼の独壇場だったものが少しずつ変わっています。ネトウヨ動画をBANした彼らは、5ちゃんねるの「なんでも実況J板」の住民で「なんJ民」と呼ばれます。5ちゃんねるでもノンポリだといわれる人たちです。その中にはリベラルな人たちもいますが、ネット右翼動画のBANは完全に遊びでやっていますよね。

【辻田】彼らは叩くのが面白いだけでしょうね。このような動向を見ていると、「記号の時代」になったと感じます。記号をうまく操作することで、人をどう動員できるのかの勝負になっていて、中身が空っぽです。国民国家の縛りも、かつてに比べれば明らかに弱い。情報も経済も人も自由に動くようになった。そうなれば、人々は記号で遊びはじめます。具体的な提案をすることなく、「アンチ○○」でしかなくなっていく。そうなるとTwitterで無限に争うことができます。

【藤井】大文字の「国家」がなくなった中で、今行われているのは右翼、左翼を問わず、言説空間内部での記号との戯れであると。