【藤井】まさに森友問題で起きたことですね。
【辻田】実際問題として忖度は行われていると思います。事前に関係者に根回ししてから文書をつくらないと、少数精鋭の官僚機構は回らないでしょう。でも政権に権限が過度に集中し、メディアのチェック機能も働かないとなれば、暴走の原因になります。集めすぎた権限をどう分散させて、チェック機能を持たせるか。権限集中の弊害が出てきていると感じます。
マスコミと市民の相互不信の解消を
【藤井】そうなると、政権交代可能な野党を育てるしかない。もう一つは市民社会がしっかりと政府を監視する。加えてマスコミの自立性が重要ですよね。マスコミの自立性についてはどう考えていますか。
【辻田】マスコミが市民社会から信頼されていないのは問題です。アメリカやイギリスなどは昔からメディアと権力が激しいぶつかり合いをしていて、さまざまな知恵の蓄積があります。日本もそこから学びながら考えないといけません。マスコミと市民社会は協力しながら権力を検証することが必要なのですが、今は政治権力が市民社会に直接働きかけてマスコミと市民とを分断しようとしている状況です。
マスコミは膨大な記者を中に抱えて、あらゆる情報を検証し、日々まとめてくれています。あんな便利な仕組みはありません。ネットメディアも今のところ既存のマスコミがあってこそ成り立つものでしょう。マスコミと市民の相互不信が解消されるのは大切だと思います。
【藤井】そうなると、政治権力のマスコミへの介入が問題であることはいうまでもありませんが、マスコミのほうも昭和の既得権益的な在り方を変える必要がありますよね。
【辻田】地上波を独占していて、既得権益を持っていることは批判されてもしょうがないですよね。オークションを取り入れるなどのさまざまな方法があるでしょう。再販制度などについても再考の余地があります。またマスコミは昭和的な体質がすごく残っていて、長時間労働、パワハラやセクハラも問題になっています。これからマスコミ自身も変わっていく過渡期なのだと思います。