「周りの人たちが、ちょっと下に見てる感じがするんだよ」

とはいっても、私には太田の裏口入学が事実ではないという反証は持ち合わせていない。まったく火のないところから煙が出たとも思わない。

だが、今回の「騒動」で、談志師匠があれほど才能を買っていた太田の、芸人としての限界が見えてしまったことが、残念である。

『新潮』の中の作家・佐藤優の意見が典型である。

「今回の猛反論ではユーモアのセンスが欠けてしまっていました。(中略)太田さんは毒舌で有名で、政治の話題にも分け入って揶揄してきた。それなのに、自分が裏口入学と報道されるとエキセントリックに反論し、それが図らずも太田さんの入学歴へのこだわりを露呈させ、何とも言えず寂しい思いになりました」

太田の本音はある番組で語った、この言葉に集約されていると思う。

「俺ホントにあの日から、周りの人たちが俺のことを見る目が、すごい何かちょっと下に見てる感じがするんだよ!」

太田は、自分は周りの人間より上だと思っていたようだ。

怒りのあまり芸人であることを忘れてしまった

無理もない。冒頭書いたように、芸人として上り詰め、テレビや新聞などは、犯罪に手を染めない限り、不都合なことには目をつぶってくれるか全く触れない。驕っていたといってはいい過ぎだろうか。

新潮社、講談社、集英社、小学館……次々に本を出すことで、出版社はオレのスキャンダルはやらない、できないと思っていたはずだ。

あの天をも怖れぬ『週刊文春』でさえ、百田尚樹やビートたけしのスキャンダルには触らないで、同誌に連載している林真理子に叱られたではないか。

一番信頼していた新潮社の週刊誌に書かれたことで、怒りのあまり芸人であることを忘れ、生身の太田光が出てしまったのだろう。