スタッフと一緒に新メニューを開発
そこで従業員を信頼し、仕事を任せた。「私はビールや料理の知識もなく、仕入れルートのこともわからない。この道のプロである彼らを尊重しました」と平尾さんは話す。この点は譲り受けた会社の経営を成功させるポイントだ。
最初は元のスタイルを踏襲することに注力し、徐々に独自色を出していった。毎週土曜日に1時間ほどミーティングを開き、メニュー変更やプロモーションについて話し合う。名物の「アイスバイン」に加え、新メニューを積極的に開発。一方で利幅の薄いランチをやめ、スタッフの負担を軽減。「こうした施策が奏功し、常連の7割が入れ替わりました」と平尾さん。
それでも消費低迷のあおりを受けて、年商は約4000万円をかろうじて維持している状況で、収支はトントン。いまは自身の報酬はゼロだが、HPとの雇用契約が切れる65歳までに店を軌道に乗せ、自分の給料を計上したいという。「本業での稼ぎがあり、つい利益の追求が甘くなる。でも、それでは店の経営はすぐに成り立たなくなり、いつも自分を戒めています」という平尾さんの話は、年金をもらいながら事業をしているシニア起業家も胸に刻みたい。
(撮影=石橋素幸)