定年後も働くなら知っておきたい「年金の支給停止」という制度。いくら稼いだらいくら年金がストップするのか。2019年60歳を迎える3夫婦の貯金額の推移と貰える年金総額をシミュレーションした――。

年金と貯蓄では破綻するかも?

老後の生活を支える公的年金。現在、夫婦2人世帯の受給額は平均20万円程度となっている。これに対し、老後に必要と考えられている最低日常生活費は月額で平均22万円、ゆとりある老後生活費は約35万円という調査結果もある(生命保険文化センター調べ)。年金では不足する分を預貯金から出す場合、月15万円を補てんすれば1年で180万円。3000万円あっても17年ももたず、60歳でリタイアすれば70代後半で底をついてしまう計算だ。ファイナンシャルプランナーの横山光昭氏はこう話す。

「現在の高齢者でさえ年金だけでは生活費が不足しがちですが、公的年金の支給は先細りが予想され、さらには長生きが当たり前になっている。老後に必要な額が膨らみ、年金と預貯金だけでは老後破綻に陥る可能性が高いといえます。少なくとも90歳程度までは貯蓄を維持できるよう、なんらかの手立てをする必要があります」

貯蓄を増やしておくのが重要なのはいうまでもないが、それには限界がある。そこで考えたいのが、長く働いて収入を得ることである。

「現役のときより収入は減るのが一般的ですが、働いている期間は貯蓄の目減りを抑えることができる。長く働くほど、老後破綻のリスクを小さくできます」

年金制度の将来像も気になるところ。厚生年金の支給開始年齢は段階的に引き上げられており、昭和36年4月2日以降に生まれた男性(女性は昭和41年4月2日以降)が受給できるのは65歳から。さらに67歳まで引き上げられたり、支給額が見直されたりする可能性もある。そうなれば、ますます働いて収入を得ることが重要になる。

そこで知っておきたいのが、60歳以降の働き方によって年金の支給額が減る可能性があることだ。

働きながら受給する年金を「在職老齢年金」といい、年金額の一部または全部が支給停止になる。自営業者は老齢基礎年金(以下、国民年金)、会社員はそこに老齢厚生年金(以下、厚生年金)が上乗せされるが、支給停止の対象は厚生年金のみで、国民年金はカットされない。また、支給停止になるのは「厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受ける人」で、なおかつ「厚生年金の支給額と、働いて得た賃金との合計が一定額を超えた場合」である(自営業やアルバイトは支給停止にならない)。具体的には、厚生年金の額を12で割った「基本月額」と、毎月の賃金と賞与の合計を12で割った「総報酬月額相当額」(以下、賃金)との合計が、65歳未満では28万円、65歳以上では46万円を超える場合で、支給停止額の計算方法は65歳未満と65歳以上で異なる。