「既存の地元産業を駆逐するのではないかという反対派の意見もありますが、重要なのは、地元の産業もその中に入っていくこと。地元や、日本の経済活性につながらないのであれば、カジノは設立するべきではありません。極端な話をすると、東京・銀座にカジノビルを建てれば儲かります。しかし、それでは社会的な波及効果がない。観光客を誘致して、その恩恵を周りにも受けさせなさいというのが今度のIR法案なのです」(佐々木氏)

セキュリティ、クリーニングなどの「ノンゲーミング雇用」

新たに生まれる雇用には、ディーラーなどカジノのゲームに直接関わるものだけではなく、セキュリティ、クリーニングなど「ノンゲーミング雇用」も多く含まれる。若者や定年退職後の高齢者、結婚・出産などの事情で仕事を辞めた女性の働き口もそこに生まれることになるのだ。

「カジノや併設のホテルでは特にホスピタリティやサービスが重視されますが、海外の事例をみると、従業員のための教育機関を用意して、経験のない人でも働けるようにしていくと思われます。働く人に向けた託児施設なども設けられるでしょう。ダイバーシティ化も進むことになります」(佐々木氏)

IRからの税収によって地元の自治体が潤い、住民への行政サービスが向上することも十分考えられる。福祉、文化保護、街の美化、観光などの面で、還元が期待される。

さらに、カジノ設立による副産物も見込まれている。「たとえば施設への入退場に顔認証が採用されるなど、日本の技術を活かす場所が新たにできます。さらに“世界最新のハイテクIR”としてパッケージ化して、海外へ輸出することも考えられます」(佐々木氏)

不動産、都市部なら売らずに持つ手も

地価への影響はどうだろうか。不動産鑑定士の浅井佐知子氏は次のように解説する。

「カジノを中心とした開発でその周辺地域が活性化していくのであれば、地価・住宅価格が上昇する可能性は大いにあります。地方にカジノができた場合、新駅ができるなどインフラが整備されて便利になることで、土地や住宅の価格を決定するための条件である快適性や利便性が上がり、地価の上昇が見込まれるのです。ただし、地方の不動産市場は土地に余裕があるため、都市部に比べると、値上がり幅は小さくなります」