地価が跳ね上がるのは、誘致が成功したタイミング

また、風紀を乱したり騒音を出したりする施設は、不動産用語で嫌悪施設と呼ばれ、地価を下げる要因となりうるが、「カジノは嫌悪施設とみなされず、地価への悪影響はほとんどないと考えられます。他のギャンブルと異なり、カジノは一般的に“お金持ちがする優雅なゲーム”といったポジティブなイメージがあります。また、カジノは統合型リゾートの中にある施設の屋内に設けられるため、騒音の心配もありません」(浅井氏)。

気になるのは、売り時、買い時だ。もしもすでに持っている土地がIR周辺にある場合は、いつ頃売るのがいいのだろうか。

「価格が跳ね上がるのは、誘致に成功し、設立が決定したタイミング。着工時にはいったん落ち着くでしょうから、オープンの前後1年あたりが、売り時の目安の1つとなります。概ね、そのあたりまでは上昇基調になるといえるからです。ただし、その先は、株価と同じで予測が難しい。たとえば、六本木ヒルズ周辺は開業から15年以上経った今も、地価が上がり続けている。IRができるのが都市部ならば、売らずに保有をおすすめします」(浅井氏)

購入する場合も底値を見極めるのは難しいが、開発による街の利便性の向上を“先物買い”するのは検討の余地大だ。

▼「賭けない人」「周辺住民」にも恩恵大の期待高まる
産業の輸出
「入退場の顔認証システム」など、日本の技術を活かす場所が増えるだけでなく、「世界最新のIR」をパッケージ化しての海外輸出にも期待がかかる。
新規雇用創出
ディーラーなどのほか、清掃、警備、飲食関連など、妻の再就職先、パート先に適した雇用が多数生まれる。
地価・住宅価格上昇
再開発により地価が上がる可能性が大きい。都市部の不動産の場合は、施設開設後も値上がりが続くことも予想される。
自治体サービスの向上
施設からの多額な税収が、福祉、文化保護、街の美化、観光など、住民の生活の質向上につながるものに使われる可能性大。
佐々木一彰
東洋大学国際観光学部准教授
専門はホスピタリティ産業とゲーミング産業。著書に『カジノミクス』(共著)など。
 

浅井佐知子
不動産鑑定士
浅井佐知子不動産鑑定事務所代表。著書に『世界一やさしい不動産投資の教科書1年生』。
 
(撮影=丸山 光 写真=iStock.com)
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