子供を置いて夫婦で1泊旅行してみたら、どうなったか

4.「緊急時ノート」を作成しておく。

子供がひきこもりの場合に限りません。誰しも、いつ“万が一”が起きないとも限りません。その際に残された家族が困らないように、連絡先や口座番号などを控えておきましょう。特に子供がひきこもりの場合は、具体的に「何をすればよいか」「どこに相談したらよいか」をメモしておきたいものです。

そして、生活力を“養成”するために最も効果的な練習になるのが、両親の小旅行なのです。まずは1泊で。それに慣れたら、今度は2泊、3泊で。

旅行前にご飯の炊き方と冷凍食品の調理の仕方を教えておき、実践してもらいます。それがうまくいかなくても、コンビニやスーパーがありますから、食べられないはずはありません。いずれは一人で生活していかなければならないのですから、今から少しずつ慣れておきたいものです。ただし、体調によっては外出できない場合もありますので、まずは1泊から試してみるとよいでしょう。

写真はイメージです(写真=iStock.com/helovi)

旅行は両親にはリフレッシュになるだけでなく、自分たちの生活を考える機会となります。この機会を通じて、子供とは別の、自分たちの人生計画を考えていただきたいのです。

子供がひきこもりとならなかった場合とまったく同じ生活、というわけにはいかないでしょう。しかし、それでもできるだけ自分たちの生活もあきらめずに、エンジョイしていただきたいと思います。それは、自分たちの人生を充実したものにするだけでなく、ギスギスした親子の関係を緩和することにつながるでしょう。

「そうですね。1日ぐらいならなんとかなりますよね。主人に相談してみます」

鈴木さんの表情が少し明るくなったので、少しホッとしました。

▼「親の旅行」は子供にプラスの効果がある

後日、実際に1泊旅行に行ったそうで、わざわざお土産を持ってきてくれました。私も内心は心配だったですが、様子をたずねたところ、「それがですね。私たちが帰ってきても、『あ、もう帰ったの』ですって。拍子抜けしてしまいました」という答えでした。

鈴木さんの表情はどこか晴れやかでした。せっかくご飯の炊き方を教えて、レトルトのおかずを用意しておいたのに、長男はそれには手を付けず、コンビニでお弁当を買って食べたそうです。それでも1日、無事に一人で生活できました。

「息子の将来を考えると、ぜいたくはできませんが、少しぐらいは自分のことも考えていいんですね」

「いや、考えたほうがいいですよ。そのほうが、ご両親はもちろん、お子さんのためにもなると思います」

将来の家計の分析と改善のご提案が私の領域です。安易に専門外のアドバイスはしないようにしています。それでも「旅行の勧め」はしています。親と子の両方にメリットがあると思いますし、何よりもご相談に来た方が明るい表情になってくれるからです。

(写真=iStock.com)
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