ひきこもりの長期化、高年齢化が社会問題になっている。中でも深刻なのが、80代の親が50代のひきこもりの子を支える「8050問題」だ。ひきこもり家庭の家計相談に応じるファイナンシャルプランナーの村井英一氏は「親が自分たちの死後も子供が生きていける経済的な環境を整えるだけでなく、衣食住の基本的な方法を早くから教えておくべき」という。人生を「子供の世話」で終わらせないための方法とは――。

親80代子50代、徐々に生活に行き詰まる「8050問題」

「もう疲れました」

写真はイメージです(写真=iStock.com/baona)

息子(28)がひきこもりであるという女性(55)は、下を向いたままつぶやきました。

私はファイナンシャルプランナーとして、ひきこもりの子供を抱えた家族の相談に応じています。子供がひきこもりで働けない状況が続いても将来、家計が破綻しないかどうかを分析し、改善点をご提案しています。一方、子供とどう接したらよいか、どうやって立ち直らせるかについては、専門外ですので、安易に言及すべきでないと考えています。

とはいっても、お金と生活スタイルは切っても切れない関係です。生活面のアドバイスに話が及ぶこともあります。

冒頭で紹介した関東地方在住の鈴木里恵さん(仮名)の長男(28)がひきこもり状態になったのは高校生の頃でした。クラスメートとのつき合いがうまくいかず、学校を休みがちに。そのうち、自室に閉じこもるようになり、高校も中退してしまいました。その後、進学も就職もできずに、ひきこもりが10年以上続いています。

現在、本人は自室でゲームに浸りきりで、あまり部屋から出てくることはありません。母親の鈴木さんが毎日、3度の食事を部屋のドアの前に置いていますが、生活時間は不規則になっているようです。このまま時間が経過すれば、親80代・子50代となり、徐々に生活に行き詰まる「8050問題」となるリスクもはらんでいます。

▼預貯金3000万円、年収800万円、今は何の心配もないが……

鈴木さんの家族構成や資産状況、年収は以下の通りです。

◆家族構成
・父親:57歳(会社員)
・母親:55歳(パート主婦)
・本人:28歳(無職)

◆資産
・預貯金:3000万円
・自宅:マンション(持ち家)※住宅ローン完済

◆年収
・父親:約800万円
・母親:約90万円