日本は経済成長率とインフレが低すぎる

アベノミクスの理論的な考え方とは、緩慢なインフレのもと景気が刺激され経済成長を図るというリフレ派の金融政策である。だが株価上昇・円安の恩恵を受けた経済成長は実現したが、インフレターゲット2%は達成できておらずデフレ脱却には及んでない。

図表3は、アジア通貨危機前(1990~1997年)とアジア通貨危機後から世界金融危機前(1998~2008年)、世界金融危機後(2009~2017年)までの3つの期間をくぎり、インフレと経済成長の関係を示している。この図表をみると、アセアン4、中国、インドと比べて日本のインフレ、経済成長率の低さが断トツであることがわかる。しかも、3期間で経済成長率は2.2%、0.8%、0.6%と低下しインフレもそれぞれ1.5%、-0.1%、0.2%と期待していた金融緩和政策の効果とは逆方向だ。2017年以降は経済成長率もインフレも上向きとはいえ、そこまで力強さがあるわけではない。

規制緩和だけでイノベーションは進まない

日本において少子高齢化により消費が減少しているのは言うまでもないが、経済の力強さが欠ける主因はイノベーション不足だろう。例えば日本はデジタル化が遅れているが、そこにはエネルギーコストの高さという悪条件がある。

一方、アジアではデジタル化が急速に進んでいる。インドでは2016年秋の高額紙幣廃止により電子決済が進みつつあり、中国では主要都市であれば小さな商店でも現金を使わずに済む。そういった決済システムを実現する際、日本ではエネルギーコストが高いために見送られてしまう。規制緩和だけでイノベーションが進むわけではないのだ。

日本になにが不足しているのか。日本はアジアから学ぶべきだ。

片白 恵理子(かたしろ・えりこ)
住友商事グローバルリサーチ シニアエコノミスト
ニューヨーク大学行政学修士、ジョンズホプキンス大学応用経済学修士。外務省経済局国際経済課経済調査員、アジア開発銀行エコノミスト、ロンドンスクールオブエコノミクスコンサルタントなどを経て現職。研究・専門分野はマクロ経済分析、貿易動向。