箸をつけたらまずくても払わなくてはならない

では、「お通しがある」との記載を見落として入店し、出てきたお通しについ箸をつけてしまった場合はどうか?

「その場合は代金を支払わないといけないでしょうね。例えば、頼んでない料理が間違って運ばれてきて、それを食べてしまったら支払いの義務が生じるのと同じです」(同)

注文と違うメニューが出てきた場合、注文したものと全く種類の違うものなら、客も違いが認識できるため、食べれば故意あるいは重大な過失ありとみなされ、代金を払わなければならない。しかし、注文の品とよく似ていて、簡単に判別できなかったら、代金を全く支払わないか、注文したものの代金のみ払えばいいという。例えば、安い日本酒を頼んだのに高い大吟醸が届き、それを飲んでしまっても、「同じ無色透明で見分けられなかったということで、安い日本酒の代金を支払えばいい」(同)。

お通し同様に、サービス料も仕組みがややこしい。だが、これもやはり店側から事前の“告知”があったうえで入店し、着席すれば“契約成立”となる。よって、「お通しがまずくても払わなくてはならないのと同じで、たとえサービスが悪くても払わなくてはなりません」(同)。

店員に誤って飲食物をこぼされ客の衣服が汚れた場合でも、サービス料は払わなくてはならない。「その代わり客は、別に店側にクリーニング代等を請求できます」(同)。

理崎智英
弁護士
福島県出身。一橋大学法学部卒。2010年、弁護士登録。福島市内の法律事務所を経て、現在は東京都港区の高島総合法律事務所にて、さまざまな業界の企業法務を担当。離婚・男女問題にも詳しい。
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