いざというとき、自分の身を守ってくれるものは何か。その筆頭は「法律」だ。「プレジデント」(2017年10月16日号)の「法律特集」では、マネーに関する6つのテーマを解説した。第1回は「所得節税のうまい手」について――。(全6回)
築年数が古くても建物の資産価値が下がらない欧米
不動産業事業を行うためにマンションやアパートを購入した場合、減価償却できることになっています。サラリーマン大家の節税法の多くは減価償却を利用したものです。しかし富裕層は、海外の中古不動産投資による減価償却を活用した節税スキームによって、より大きな節税効果を上げています。
特に日本と異なり築年数が古くなっても建物部分の資産価値がほとんど下がらないアメリカやイギリスの住宅が対象です。ニューヨークやハワイでは日本の法定耐用年数が過ぎても高い資産価値を保つ建物が多く、賃貸アパートの需要も強いのが魅力になっています。
どういったスキームなのでしょうか。海外にある不動産でも、日本在住であれば、日本の税制に従う必要があります。減価償却の計算方法も、建物価格だけを日本の税制に則って減価償却していくことになります。つまり物件価格に占める建物価格が大きく、減価償却期間が短いほうが理論上は、節税効果が高くなるわけです。
日本で減価償却が終了した建物は、たとえ十分使用できる状態でも、ほぼ建物の価値がないと見なされます。例えば、日本では木造の建物の場合、法定耐用年数は築22年で、これを超えてしまうと減価償却がなくなり、その価値は実質上、土地の評価だけになります。
アメリカでは1950年代の家でも流通している状況で、日本のように22年を超えた木造建物の価値がなくなるようなことはありません。アメリカでは建物価格を評価する場合に、日本に比べて建物価格の比率が高く80%前後になるケースもあります。日本の富裕層はこの日米のギャップに注目して税対策の1つとして、減価償却を利用するわけです。