気鋭の心理学者が編み出した最新の「夢実現法」

エッティンゲンは、これと同じシステムを、私たちが実践しやすいシンプルな形にまとめ、「WOOP」と名づけた(正式な用語では「心理対比」というが、ここでは「WOOP」と呼びたい)。WOOPとは、願い(Wish)、成果(Outcome)、障害(Obstacle)、計画(Plan)の頭文字を取ったもので、仕事や人間関係、運動、減量など、ありとあらゆる目標に適用できる法則である。

まず、自分の願いや夢をイメージする(「すてきな仕事に就きたい」)。次に、願いに関して自分が望む成果を具体的に思い描く(「グーグル社で事業部長として働く」)。それから現実を直視し、目標達成への具体的な障害について考える(「同社の面接を受ける方法がわからない」)。障害に対処する計画を考える(「グーグル社で働いていて、人事部に連絡してくれる知人をリンクトインでチェックする」)。

WOOPはとても簡単だ。そして素晴らしいのは、ただ夢に描くことと違って、理想を実現する活力が奪われないことだ。しかもWOOPにはさらなる利点が1つあり、それは私たちがあることを最後までやり遂げるか、見切りをつけるかを判断するうえで決め手となる。皮肉にもこの利点は、WOOPが誰にでも有効なわけではなく、また、効き目があるかどうかはランダムに決まるわけではないことを意味する。

エッティンゲンの研究により、「心理対比」は、頑張れば目標を達成できるときにやる気を後押ししてくれるが、目標の実現可能性が低い場合には効果がないことが明らかになった。すなわち、WOOPは、目標が実現する可能性を測る個人的なリトマス試験紙にもなるものだ。あなたの願望が「グーグル社で働く条件は満たしているが、次にどうすればいいのかわからない」といった妥当なものなら、WOOPはそれを実現するプランと活力を与えてくれる。しかし、願望が現実からかけ離れている場合(木曜までにオーストラリアの皇帝になりたい)など、WOOPはうまく機能せず、夢が妥当でないことを教えてくれる。

「夫婦げんか」を未然に防ぐ確実な方法

たとえば、理想のパートナーにめぐりあえない人は、「私たちはソウルメイトなの!」と言うかわりに、一歩離れて考えよう。私の願いは?

「完璧な結婚」? ではその具体的成果は?
「争いのない幸せな家庭」? 起こりうる障害はなんだろう。
「何を買うかでいつもけんかする」? それに対処するプランがあればいい。 

もしこのようにWOOPを試して、愛する人とイケアに買い物に行く元気が湧いてきたら、あなた方夫婦はうまくいっている。逆に、配偶者と問題を解決する意欲がますます失せてしまったら、残念ではあるが、WOOPによって結婚生活の現実を知り、この先何年かの歳月を無駄にせずにすむかもしれない。WOOPは、目標が現実的かどうか、そしてそろそろ諦めるときか、それとも耐えるべきかを教えてくれるだけではない。あなたが達成不可能な願望から解放されるように、また、夢を断念しても後悔が少なく済むように手助けしてくれるだろう。

WOOPは、グリット(やり抜く力)を必要とするときを教えてくれて、頑張り続ける意欲を奮い起こさせてくれる。加えて、断念すべきものも教えてくれ、その実行にあまり痛みをともなわないようにしてくれる。最適理論に詳しい数学者がはたして幸福な結婚生活を送っているかどうかはわからないが、WOOPは、やり遂げるべきか、諦めるべきかに関して答えを見つけるのに最適だ。

エリック・バーカー
大人気ブログ“Barking Up The Wrong Tree”の執筆者。脚本家としてウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、20世紀フォックスなどハリウッドの映画会社の作品に関わった経歴をもち、『残酷すぎる成功法則 9割まちがえる「その常識」を科学する』は、初の書き下ろしにして全米ベストセラーに。
(写真=iStock.com)
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