日本の大企業の課長・部長給与は「中国よりずっと下」

では、日本国内の企業に勤める管理職の年収はいくらなのか。

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(2017年)から試算した課長級の年収(男女計、学歴計)は約853万円、部長級は1051万円だ。ともに前年より下がっている。

従業員1000人以上の大企業でも課長級989万円、部長級1232万円となっている。前述した中国とシンガポールの「金融系の営業職」の管理職はすでに日本の大企業の課長、部長級を上回る企業が当たり前のように存在しているのだ。

「今現在でもアジア各国の上位層の年収が日本を抜いているところも多いです。特に中国の上位層は日本以上の高い年収をもらっています。いずれミドル層についても日本を追い越すのは間違いありません。市場規模自体が中国は日本より大きく、管理職が高い給与をとるのは自然の流れです。日本の平均的給与は10年後にはアジアのトップクラスから2~3位に転落する可能性は十分にあります」(JACの黒澤氏)

▼日本で爆買いするのは「富裕層」ではなく普通の会社員
写真=iStock.com/alexsl

日本の正社員の平均給与は487万円(2016年、国税庁調査)。アジアに誇れる“給与先進国”とは言えなくなりつつある。

近年、日本に来る中国などアジアの観光客が増加の一途をたどっている。その背景にはアジアの給与の上昇に伴う可処分所得の増加が関係している。観光で来日するのは一部の「富裕層」ではなく、ごく普通の会社員なのだ。

かつて日本人の多くが、タイ、マレーシアなどの観光地に大挙して出かけて彼我の所得格差の違いを享受した。その逆の現象がすでに始まっているのだ。

(写真=iStock.com)
【関連記事】
論文不正は"研究者の薄給"を放置したツケ
9月に向けて「派遣切り」が急増するワケ
"ウンザリだ"課長の半数が出世を拒む理由
中国人は会社の規模を「時価総額」で話す
中国人がコース3万円を"安い"と喜ぶワケ