業態を変えながら成長を続ける会社と、あれこれ手を出して失敗する会社の分かれ道は、どこにあるのでしょうか。中小企業の経営コンサルティングなどを手がける武蔵野の小山昇社長は、「社長が『あれもやりたい』『これもやりたい』では、会社はダメになる。『やらないこと』を先に決める社長がいい社長」と説きます――。

※本稿は小山昇『絶対会社を潰さない社長の口ぐせ』(KADOKAWA)の第2章「右肩上がりの経営を行なうための10の口ぐせ」の一部を再編集したものです。

ほかの業界の成功事例を取り入れる

「今と同じやり方」「今と同じ考え方」「今と同じ人」を捨てて、「新しいこと」を取り入れなければ、会社を変えることはできません。

小山昇『絶対会社を潰さない社長の口ぐせ』(KADOKAWA)

そう言うと、多くの人が「誰もやっていないこと」をやろうとしますが、それは間違いです。ここでの「新しいこと」とは、「誰もやっていないこと」の意味ではなく、「他社は成果を出しているが、自社がまだやっていないこと」「他業界では常識でも、自分の業界ではまだ常識になっていないこと」「すでにあるものの組み合わせを変えること」です。

会社に変化を起こすには、今までの考え方や常識を捨てて、「業界の非常識(ほかの業界の成功事例)」を積み上げていく必要があります。他業界でうまくいっていることを、自分の業界で最初に実行する。サービス業なら、製造業で常識となっていることを自社に転用する。製造業なら、エンタテインメント業界で成果の出ている取り組みを取り入れる。これが大事。

ライバル企業と同じことをしていては、差は縮まりません。同業種の場合、どうしても既存の枠組みから抜け出すことができないのです。

「真似」は最高の創造かつ最高の戦略

武蔵野が伸びているのは、業界の非常識を、社内に取り入れているからです。

私は、自称「パクリの天才」です。これまでにも「『株式会社武蔵野』の正式名称は、『株式会社盗品見本市』」と冗談めかすくらい、他社の真似ばかりしてきました。わが社のしくみは、100%どこかの真似であり、自社で考えたものは、何ひとつありません。

個性が尊重される時代にあっては、「真似すること」は「恥ずかしいこと」だと思われがち。「独自性で勝負することが正しい」と考えられています。ですが、私はそうは思いません。とくに中小企業は、真似することが正しいことなのです。

「学ぶ」は「マネぶ」。真似は最高の創造であり、真似は最高の戦略です。愚直に真似をして3年も続けたら、それはもうオリジナルです。

多くの会社が、0から1を生み出そうとします。ですが、経験や実績が不足しているために、結局は「1」を生み出すことはできません。だとしたら、すでにでき上がっている「1」を真似るほうが近道です。独力で頑張って成果を出せないより、「人に聞きながらでも成果を出すほうが正しい」と私は思います。