「時間」という資産は、誰にとっても有限だ。ところが、その使い方は人によって驚くほど違う。いつも時間が足りない人と、仕事が終わる人の違いはどこにあるのか。「プレジデント」(2017年3月6日号)より識者の助言を紹介しよう。今回は「残業の上限」について元東京労働基準局労働基準監督官の弁護士に聞いた――。

上限を超える残業をさせる会社が抱える訴訟リスク

長時間労働を抑制するため残業禁止制度をつくる企業が増えている。しかし、管理職の側からすると業務遂行上、部下に仕事を頼まなければいけないケースも存在する。外井浩志弁護士はこう話す。

「労働基準法36条に基づく協定、いわゆる“サブロク協定”では残業の上限を月45時間、年360時間と定めています。労使合意すれば1年の半分(6回)までこの上限を青天井で超えることができる特別条項があります。ただ現在政府は、その場合でも上限を月60時間とする方向で検討中です。今後、社員に上限を超える残業をさせることは会社にとって訴訟リスクを抱えることになります。長時間の残業をしないとやっていけないような会社は、社員を増やすか、仕事を減らすか、2つに1つです」

現場を預かる管理職は、部下の性格や能力を見極め、上限の残業時間を超えないように仕事を割り振る能力が求められる。

「社員に能力差があるのは当然で、そこを考慮せずに仕事を振り、できなければ残業しろ、はもう時代にそぐわない」