いざというとき、自分の身を守ってくれるものは何か。その筆頭は「法律」だ。「プレジデント」(2017年10月16日号)の「法律特集」では、職場に関する8つのテーマを解説した。第1回は「未払い残業代」について――。(全8回)

法定労働時間を超えて働いた場合は「時間外労働」

ちょっとした時間外労働でも「サービス残業」にはせず、きっちり残業代を請求する社員が目立ってきた。もちろん、法律や契約で定められた分については、残業代を支払わなければならない。しかし、経営者が労働法の理解不足のために、本来、支払わなくていい残業に関わる「割増賃金」を支払っているケースが少なくない。

そもそも労働基準法には「残業代」という概念はなく、「労働者に1日8時間、週40時間を超える労働をさせてはならない」という規定があるだけ。この法定労働時間を超えて働いた場合は「時間外労働」となり、割増賃金が発生する。1日9時間働いた場合、時間単価に25%分を割り増しした1時間分の賃金を加えて支給する。

よくある誤りは、残業した分のすべてに割増賃金を加算すること。就業時間を9~17時、昼休みを1時間と就業規則で定め、実質7時間労働になっている企業が多い。すると社員が18時まで残業しても、8時間労働の枠内(法内残業)で、時間単価分は支払うにしても、割り増しを支払う義務はない。残業したのが遅刻して10時に出社した社員だった場合、同日の遅刻と残業は相殺が可能で、1時間当たりの時間単価分も支払わなくて済む。