行き詰まった現状を打破するにはどうすればいいのか。「プレジデント」(2017年12月4日号)では、4人の識者に「最高の自分」をつくる方法を聞きました。第2回はドイツ人心理学博士による「ものごとをポジティブに捉える方法」――。(全4回)

すべての失敗経験が、成長の糧になる

仕事をしていれば、うっかりミスをしてしまうこともあります。

心理学博士 浦上ヤクリン氏

「14時のアポイントを(午後)4時と勘違い」「重要な会議に大遅刻」「発注数のケタを間違えた」……。

聞き間違い、記憶違いといった類いもよくあるでしょう。さらに、ミスではないけれど、ノルマや目標を達成できない自分にがっかりすることもあるかもしれません。

こうした状況のとき「自分はダメな存在だ」と落ち込み、鬱々とした気持ちを引きずっていると、再びミスを犯しかねません。ネガティブな循環を断ち切るにはどうしたらいいか。私は「ものごとをポジティブに捉えることが大切」だと考えます。

そもそも、人間は生きていたら大なり小なりミスをします。赤ちゃんも、転んだりぶつかったりして歩けるようになります。失敗経験を積み重ねて、徐々に成長していくのです。それは状況や年齢の差はありますが大人も同じ。仕事でのミスはきっと自分の成長の糧になるはずです。

ただ、そうやってミスをプラスに捉えることができない人は、ひとり反省会です。2度と同じ失敗をしないために原因をしっかり探って対策を立てます。繰り返しはしない、と意識することで多くの場合は改善します。そして、このとき1番大事なのは、「悪いのは“自分”ではなく“行動”」と考えることです。

やってしまったことは悪いことでも、あなたという人間が悪いわけではありません。自分という人間の“資質”と、“行動”は別ものです。修正すべきは、行動。自分の資質は簡単には変えられませんが、行動は変えられます。失敗の原因究明と対策をやったら、あとはいい意味で開き直るのです。逆に、自分の資質を責めてしまうとネガティブな循環から抜け出しにくくなります。

極端な自己否定からはプラスなものは生まれません。当然のことですが、人にはそれぞれ長所があります。短所ばかりではありません。

ところが、日本人の国民性として、「マイナス」部分により着目する傾向があるように感じられます。

日本は世界的に見ても、「不確実性の回避」をする文化の国のひとつです。いつ何がどうなるかわからないといった不確実な状況を極力避けたい人が多く、「いつもと違うこと」や「急な変更」「不測の事態」を好みません。これは、失敗や間違いを忌み嫌う文化であることを示唆していると思われます。