※本稿は、「プレジデント」(2017年12月4日号)の特集記事「最高の自分をつくる方法」からの抜粋です。
懸命に稼ぐのはいいことなのか
仕事の世界で長く過ごすにつれて、私たちは仕事の金銭的側面に重きを置くようになり、お金を稼げる仕事が好ましい経験で、お金を稼げない仕事が悪い経験だという思考様式に染まっていく。こうして、お金を稼ぐことが仕事の最大の目的となり、そのお金で消費することを人生の目的とする発想がいっそう強まる。消費するためにお金を稼ぎ、お金を稼ぐ結果、ますます消費するという循環が生まれる。
しかし、お金と消費を中核に据える考え方が深く根を張り続けてきた理由は、ほかにもある。多くの社会では、お金は単に消費の手段というだけでなく、その人の社会的地位を映し出す社会的標識の役割も果たしている。お金は、個人の自我から切り離せない一部になっているのだ。
私たちはモノやサービスを購入することを通じて、自分の人間としての価値を立証しようとする。世界の多くの社会では、お金が社会的地位の証として最も強力な要素になっている。そこで、私たちはお金を稼ぐために懸命になる。
問題は、誰もがほかの人との比較を通じて自分の地位を証明しようとすると、競争が生まれて、達成すべき基準がどんどん高くなっていくことだ。こうして、私たちは、ライバル以上に稼がなくてはならないと強く思うようになり、お金と仕事の結びつきがひときわ強化される可能性がある。
仕事にやりがいを感じる条件
もっとも、なかにはお金がゴールになっていない仕事もある。非営利団体セーブ・ザ・チルドレンの管理職の言葉を紹介しよう。
業績をあげた人物に高給で報いることができない組織は、代わりにどのような「報酬」を提供できるのでしょうか? 私の場合、リーダーシップを振るい、責任を与えられ、意思決定をくだす経験がとても大きな報酬になっています。そのおかげで、仕事を通じて幸せを感じられています。このような機会が得られるとわかっていれば、物質的な要素はもっと早く捨てていたのに。
物質的でない目標を掲げる組織で働くと、自分のなかで非物質的な欲求が強まるらしい。この人物は、リーダーシップを振るい、責任を与えられ、意思決定をくだす機会を最も重んじている。これらの要素が仕事にやりがいを感じる条件になっているのだ。