サボっているわけではないのに、職場で満足な評価を得られない人がいます。日本IBMでエグゼクティブ・プロジェクト・マネジャーを務める木部智之氏は「上司や職場の評価を得る上で、絶対に欠かせない視点がある」といいます。それはいったい何なのでしょうか――。

※本稿は、木部智之『複雑な問題が一瞬でシンプルになる2軸思考』(KADOKAWA)を再編集したものです。

 

「いま、自分がどこにいるのか?」を見失ってはいけない

フルマラソンを走ろうとするとき、最初の1kmを全速力で走ろうとする人はいませんよね。

なぜかというと、目の前にある1キロは、42.195kmのうちの「最初の1km」だとわかっているからです。

自分の能力を見極め、最適なペース配分を策定し、その計画に忠実に従って走らなければ、長丁場のフルマラソンを完走することはできません。

逆に、目の前にある1kmが、42.195kmのうちの「最後の1km」ということがわかっていれば、もうどうなってもいいから、残っている自分のすべての力を振り絞って全力で走り切るに違いありません。

木部智之『複雑な問題が一瞬でシンプルになる2軸思考』(KADOKAWA)

大切なことは、自分の目の前の1kmが、

・最初の1キロなのか
・中盤の1キロなのか
・最後の1キロなのか

を知ることです。

そのために必要なのが「全体像を捉える」ことです。

一見すると、すぐに行動にとりかかるほうが、先にゴールに着けるように思えるかもしれません。

けれども、「即・行動」は「無計画」とも言い換えられます。今、自分が歩き出している道が間違った道だったり、ひどく遠回りの道である可能性もありますから、全体像を捉えるほうが大事なのです。

重箱の隅ばかりつついていないか?

仕事もまったく同じです。

よく、「あの人は重箱の隅ばかりつつくよね」などと言われることがあります。全体のバランスを考えず、些末なことばかりにとらわれ、こだわっていることを揶揄する言葉です。

では、そのような人たちはなぜ重箱の隅をつついてしまうのでしょう?

答えは明らかで、今、自分がつついている場所が「重箱の隅」であることに気づいていないからです。

重箱の全体像がわかっていなければ、自分がつついているところが隅なのか真ん中なのか、把握することができません。

仕事の細部にこだわりすぎて、やるべきことの「本質」を見失うと、必ずヌケやモレが発生します。

たとえば、作成中の資料のデザインに凝りすぎて、最も重要なコンテンツがストンと抜け落ちてしまったり……。自分自身は一生懸命やっていたにもかかわらず、最終的に良い結果を出すことができず、「あの人は仕事ができない」という評価に至る悪いパターンです。