一時は年内に条文化された改憲原案を提示すると報道されていたということと比較すると、遅れている印象もあるが、年明けからは一気に「改憲ギア」が上がるはずだ。推進本部の主要メンバーの1人は「論点整理を出すことで、いい意味で物議をかもし、各党の論議を活性化させたい」と打ち明ける。早ければ18年中に国民投票まで、遅くとも発議までは行ってしまおうというのが推進本部の共通認識だ。

具体的な改憲項目は今後の与野党協議の推移しだいだが、(1)の「自衛隊」が改憲項目に入らないことはあり得ないだろう。安倍首相自身、改憲項目などについては「自民党に任せる」と繰り返してはいるが、「自衛隊」の明記を見送った場合、「改憲してもしなくてもいい項目だけの『お試し改憲』」と批判されるのは確実。これでは安倍首相のプライドが許さない。

世論は自衛隊明記に反対しているが……

言い換えれば「自衛隊」明記は、今上がっているテーマの中で最も難問ということになる。論点整理では、この項目について、戦力不保持を明記した9条2項を残したまま自衛隊を明記する案と、削除したうえで自衛隊を盛り込む案の両論併記となっている。

2項を残したままだと、明らかに戦力を持つ自衛隊の存在との整合性が問われる。逆に2項を削除すると、自衛隊が歯止めなく海外で武力行使する存在になるという不安を国民に与えかねない。

党内では意見集約ができていないが、共同通信社が11月に行った世論調査では9条に自衛隊明記に反対する意見が52.6%で多数を占めた。2項の削除はもちろん、9条に自衛隊を明記すること自体に国民の反対は根強い。このまま発議しても、国民投票に持ち込まれれば否決されてしまう可能性もある。

「内閣」の章に「自衛隊」を書いてしまう

そういうことも見こし、自民党内ではひそかに「裏技」ともいえる案があるという。自民党関係者は「自衛隊を明記すると言っても、9条に書き込まなければならないというわけではない。全く別の条文に書くという手もある」と打ち明ける。