10月22日の衆院選から約1カ月。やっと国会で論戦が始まろうとしている。だが安倍晋三首相は、今国会のことなど眼中になく、来年以降本格化する憲法改正に照準を定めている。安倍首相は政党間の協議に期待するだけでなく、自らが個別に議員を説得し、改憲を実現しようという構えも見せ始めている。まるで奴隷制度廃止に向けた憲法改正を実現するため、慎重な議員を1人ひとり説得していった米第16代大統領・エイブラハム・リンカーンのように――。

「希望の党」のリベラル旋回はない

「日本の未来をしっかり見すえながら、今、何をなすべきか。与野党の枠を超えて、建設的な政策論議を行い、共に、前に進んでいこうではありませんか。互いに知恵を出し合いながら、共に、困難な課題に答えを出してく。そうした努力の中で、憲法改正の議論も前に進むことができる。そう確信しています」

11月17日、衆参の本会議場。安倍晋三首相は、所信表明演説に臨んだ。衆院選での勝利を受け余裕の表情で、野党側に目を向けた。

「改憲勢力」は衆院では約8割を確保。参院でも3分の2を維持している。議席数をみれば、改憲案を国会で発議し、国民投票に持ち込むことは可能になっている。安倍首相は今、改憲論議については自民党の憲法改正推進本部に任せており、1歩退いたように見える。ただし、これは年末から年明けに向けて自民党の案がまとまり、国会に提出されたら自らが前面に出る構えだ。

安倍首相が狙い定めるのは希望の党だ。リベラルの受け皿となった立憲民主党と違い、既に「改憲勢力」に位置づけられる希望の党。保守色の強い小池百合子東京都知事が代表から退いたことでリベラル旋回するのではないかとの見方もあるようだが、それは間違っている。むしろ逆だ。