自民党入りというシナリオも視野に

玉木雄一郎代表は、政調会長に長島昭久氏、憲法調査会長に細野豪志氏を起用した。2人はともに民進党の幹部だったが、その中では最も保守的な考えで、自民党議員とのパイプも太い。「自民党入党予備軍」とさえ言われてきた。玉木、長島、細野の3氏は憲法改正論議で自民党と接近し、いずれは連立、そして自民党入りというシナリオも視野に入れている。

希望の党は22日、憲法調査会の初会合を開き、党としての考えを条文化し草案化を進める方針を決めた。玉木氏は自衛隊が憲法に規定されていないことを念頭に「明文規定がないことで、かえって時の権力の自由な解釈を許してしまう」と発言。9条も含めた改憲に前のめりの姿勢を隠さなかった。

2018年以降、自民党側が希望の党の草案の一部を取り込むような形で希望の党が与党の一角に組み込まれていく可能性は十分にある。競い合うように日本維新の会も自民党に接近していくことだろう。

スピルバーグ監督の映画がヒント?

安倍首相は、こういった展開はもちろん想定している。機が熟せば自身が玉木氏と会談して改憲で足並みをそろえたいと思っている。

その一方で、もう1つの道も念頭に置く。改憲に理解のある勢力を党まるごとのみこむのではなく、個別の議員を1人ずつ、安倍首相自身が説得するという道だ。安倍首相は最近、周辺に「1人ひとり、丁寧に語り合い、理解を深めたい」と語っている。希望の党、維新の会だけでなく、無所属議員などにも個別説得していく考えのようだ。

米国の場合、憲法の改正や法案の成立に向けて大統領が議員1人ひとりにコンタクトを取り賛同を求めることが多い。

2013年公開された映画『リンカーン』(S・スピルバーグ監督)では、奴隷制廃止に反対する議員をリンカーンが個別に会い、粘り強く説得し、時には交換条件を示すなどして憲法修正第13条可決を実現していく過程が克明に描かれている。