5章「内閣」の中の73条に……

一例としてあげるのが5章「内閣」の中の73条。この条文は内閣が行う具体的な事務の内容が列記されたもの。少し長いが全文を紹介したい。

▼第七十三条
内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一・法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二・外交関係を処理すること。
三・条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四・法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
五・予算を作成して国会に提出すること。
六・この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七・大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

この条文の「八」に「自衛隊の指揮」というような事務を書き加えるというのが「裏技」の1つだ。内閣が行う仕事の中に「自衛隊」を書くだけなら、平和主義が揺らぐという批判は起きにくい。9条に書き込むよりもはるかに理解は得やすいだろう。

頭の体操としてはかなり議論が進んでいる

9条以外の条文に「自衛隊」を潜り込ますことの可能な条文は他にもあるという。もちろん、この案は、与党内で正規に議論されているわけではないが、頭の体操としてはかなり議論が進んでいるようだ。

もちろん自民党内で9条2項を削除しようと考える勢力は、この「裏技」に反対するだろう。安倍首相も、2項を残すかどうかはさておき、9条に自衛隊を明記したいと考えているため、「裏技」は好ましい展開ではない。9条改憲で突破できそうなら、このあくまで「正攻法」で行こうとするだろう。しかし、それが難しい場合には「裏技」が浮上してくる。

いずれにしても政府・自民党側の改憲に向けての準備は硬軟とりまぜて周到に進んでいる。かたや野党側は改憲勢力と非改憲勢力に分断され、中小の政党がいがみ合う状態が続く。今のままなら18年の改憲論議は、自民党ペースで進んでいくことになりそうである。

(写真=UPI/アフロ)
【関連記事】
"9条"と同時に改憲すべき"76条"とは何か
"希望の党が希望"安倍首相に改憲は可能か
橋下徹"国連を動かすのは核保有の脅しだ"
日本国憲法は「みっともない憲法」なのか
自衛隊に敵ドローンを撃ち落とす権限なし