喫茶と洋菓子の「二刀流」
愛知県名古屋市北区に「上飯田」(かみいいだ)という町がある。地下鉄の駅はあるが、繁華街ではなく下町色の強い住宅街だ。その駅から5分ほど歩くと、瀟洒な店構えの喫茶店「カフェタナカ」が見えてくる。実はこの店、県外からもお客が訪れる人気店だ。
門をくぐり店内に入ると、左側が「洋菓子売り場」、右側が「カフェ」となる。洋菓子売り場の大型のショーウインドーには、「モンブラン」や「和栗のフィナンシェール」、「タルト・タタン」(りんごのタルト)「タルト・オ・ポワール」(洋梨のタルト)などが並ぶ。
カフェはネル(布)ドリップのコーヒーが自慢。名古屋地区で初となる「スチームパンク」という抽出機も導入した。食事も充実しており、名物は「鉄板スパゲティ」(鉄板に玉子を敷き、上にスパゲティを載せたもの)だ。
各地の喫茶店では持ち帰り用のケーキを売る店も多い。洋菓子店であれば飲食ができるように「イートイン」をもうけている店もある。だが、それらは中途半端になりがちだ。どちらも本格的というカフェタナカのような店は珍しい。これは「喫茶王国」と呼ばれる名古屋市で、カフェタナカが人気店となった理由のひとつだろう。
なぜ名古屋は「喫茶王国」なのか
なぜ名古屋市は「喫茶王国」と呼ばれるのか。筆者は以下の4つの理由を挙げてきた。
(1)「自宅の居間」や「会社の応接室」の延長線上で店を使う
(2)「喫茶代におカネを使う都市」で、毎回岐阜市とトップ争い
(3)大手チェーン店もあるが、伝統的に個人店が強い
(4)常連客向けに始まった、無料の「モーニングサービス」が定番
今回は(3)と(4)に言及しながら、独自の道を歩む同店の取り組みを紹介したい。