約1年前にNHK BSプレミアムで放送され、反響の大きさからたびたび再放送されている旅番組がある。料理研究家・土井善晴と俳優・野村周平がキューバで暮らした1週間のドキュメンタリーに映っていたのは、年の差37歳の男2人が出会って歩み寄る、下手なドラマよりもドラマティックなストーリーだった。

「テレビ・ドキュメンタリー」というくくりを広く捉えた時、その中のひとつに、生身の人間同士の関係の変化を追うタイプの番組がある。こうした番組はいつの時代にも存在していた。自分の記憶をたどってみると、古いところでは『ねるとん紅鯨団』(1987~94年/フジテレビ)が思い当たる。恋愛バラエティであると同時に、リアリティ番組としてドキュメンタリー要素も含んだ『ねるとん』は、「ねるとんパーティー」という言葉を世間に定着させるほどの影響力を当時持っていた。

その後、フジの『ねるとん』の水脈は、2000年代の『あいのり』(99~2009年)、2010年代の『テラスハウス』へと引き継がれる。『あいのり』は、男女が1台のワゴン車に乗って世界中を旅する番組だったが、放送された90年代終盤~00年代は、世界を旅して“自分探し”をすることが流行した時代だった。そして『テラスハウス』は、シェアハウスの隆盛と軌を一にしている。

そして今、有名人同士が一定期間一緒に暮らす企画で、ひそかに人気を集めている番組がある。NHK-BSプレミアムで不定期に放送されている『チョイ住み』だ。

藤井フミヤ&亀田興毅! 『チョイ住み』組み合わせの妙

この番組では、毎回ひとつの国や地域で2人の出演者が共同生活を送る様子を放送する。ライフスタイル関連の媒体で「旅するように暮らす/暮らすように旅する」というキーワードが頻出する現在、かつての“自分探し”のようにあちこちを回るよりも、ひとつの場所で地に足をつけて暮らすことで世界を深く知ろう、というモードが、ひとつの気分として存在していることは間違いないだろう。

『チョイ住み』の人気の理由のひとつは、出演者2人の組み合わせの妙だ。歌手の藤井フミヤとプロボクサー・亀田興毅が台北で、格闘家の小川直也と人気若手俳優の竹内涼真がリスボンで、と意外な2人が共に暮らす。現在までのところ、同性同士に限られているのも特徴だ。

『チョイ住み』はこれまでに11カ国でロケを行ってきた。そのなかでも「神回」と評判が高いのが、2016年7月21日に放送された「キューバ編」である。NHKも人気の高さを認識しているのだろう。たびたび再放送されており、去る6月17日にも何度目かのオンエアがあった。

出演者は、料理研究家の土井善晴と、俳優の野村周平だ。2人は初対面で、37歳の年齢差がある。共同生活の始まりは、緊張感漂うものだった。