悪名高い、闇将軍の実像

拙著『ドン』が発売となり、ありがたいことに、大きな反響を頂いている。都知事選も含め、読者の判断に資するものとなれば幸いである。ドンに関する私論を1冊の本にまとめるにあたり、やはり、戦後日本の礎を築いた田中角栄元首相の業績を明らかにしなくてはいけないとあらためて感じた。彼こそは、ドンの中のドン、スーパードンなのだ。

日本史上最高のドン 田中角栄元首相
1918~93年。自民党最大派閥の田中派(木曜クラブ)を率い権勢をほしいままにした。著書『日本列島改造論』がベストセラーとなった72年、総理大臣に就任。76年にロッキード事件で逮捕された。(時事通信フォト=写真)

2016年がロッキード事件での逮捕から40年だったこともあり、関連書籍の出版が相次ぎ、角栄ブームが続いている。角栄といえば、日本列島改造論とともに、土木建設業界を票田や資金源としてまとめあげた「闇将軍」というイメージが強く、ブームの中でも、日本列島改造論や日中国交正常化など総理総裁を狙える位置に立って以降のエピソードが語られることが多いが、私の見る角栄像は少し違う。