妻に仕事を辞めさせたことが離婚の最大の原因

娘(義妹)たちは介護をしない自分を棚に上げて、兄である夫にそれを報告。夫はそれを真に受けて、奥さんに「なにやってるんだ」と。奥さんのほうも「私の苦労を知ろうともしないし、手伝ってもくれない」と応戦。そんな言い争いが繰り返されることになりました。

「実際、私が訪問してもご主人が対応されたことは1度もありませんでした。そんなところからも、介護を奥さんがひとりで頑張っていると感じました」(Yさん)

その後も奥さんは夫に介護の大変さを訴え続けましたが、夫は聞く耳を持たず、それどころか、奥さんに「仕事をやめてくれ」と言い始めました。自分の稼ぎで十分やっていけるし、奥さんに介護に専念してもらいたいというわけです。

奥さんの置かれた状況と気持ちを無視した夫の勝手な提案でしたが、奥さんはなぜかこの提案を受け入れて、仕事を辞めてしまいます。口論を続けることに疲れ、投げやりになっていたのかもしれません。ところが、この決断が夫婦仲に大きな亀裂を入れる決定打となりました。

「奥さんはある会社の経理を担当していました。ベテランとして仕事ぶりは周囲から評価され、頼りにされていましたし、奥さんもやりがいを感じているようでした。そして何より会社で働いている間は、お姑さんと離れ、介護のことを忘れることができた。気持ちをリフレッシュし、立て直す場でもあったわけです。しかし、会社を辞めたことで、そうした逃げ場がなくなった。お姑さんとは四六時中顔を合わせることになり、それが大きなストレスになりました」(Yさん)

姑の世話で疲労困憊の妻が起こした「ある行動」

精いっぱいやっているつもりの介護もお姑さんには評価されず、それどころか義妹さんたちに否定的に伝えられる。それがご主人に伝わり、文句を言われるという悪循環……。

我慢の限界がきた奥さんは、ある行動を起こします。

姑の年金収入や家の資産をチェックし、その条件で入所できる有料老人ホームを探したのです。そして夫にそのパンフレットを見せ、「お義母さんを施設に入れてください」と言ったそうです。しかし、夫から返ってきた言葉は「おふくろは、この家にいたいと言っている。施設に入れるのは無理だ」。奥さんの気持ちはこの返答で切れ、別居。ほどなくして離婚に至ったそうです。

介護によって良好だった家庭が崩壊してしまうことがあるのです。