改憲は、最終的に国民投票により国民の手で決められる。だが、その決断も、安倍氏の改憲カレンダーの影響を受ける可能性がある。

先ほど「国民投票は19年」と書いた。実のところ、安倍氏はさらに具体的なことを描いている。7月に行われる参院選と同日で行うというシナリオだ。

国政選挙と国民投票はルールが違う

一般論で言えば、国政選挙と国民投票を同日で行えば、改憲派が有利になる。改憲案は国会の3分の2以上の賛成によって国民投票にかけられる。国会で圧倒的多数を占める改憲勢力が出馬する国政選挙と同じ日に選挙を行えば、国民投票も改正を支持する投票が過半数を占める可能性が高くなる。

憲法改正の是非と、参院に誰を選ぶかという判断は、本来まったく別のものだ。改憲には反対だが、普段世話になっている参院議員候補は改憲勢力なので、賛成を求められて迷う、というケースも出てくるだろう。結果として国民は純粋な判断がしづらくなる。

もうひとつ問題がある。国政選挙は公職選挙法、国民投票は国民投票法を根拠法にしているため、ルールがまったく違うのだ。例えば選挙運動は戸別訪問が禁止されているが、国民投票運動は自由。夜間の演説も選挙運動は禁止で国民投票運動は自由だ。もし同日選になれば、選挙運動と国民投票運動が混然一体となって行われる。どれが合法でどれが選挙違反か分からなくなり、選挙は混乱しかねない。

安倍氏が5月3日に打ち上げた改憲提案は、メディア、政党、国民それぞれを振り回し、さらに混乱させる心配をはらみながら、それでも安倍氏ペースで着々と進んでいる。

自分の任期中に改憲を実現し、歴史に名を残そうという安倍氏の意欲は並々ならぬものがある。そこにブレーキを踏む勢力は、今のところ見当たらない。

(写真=時事通信フォト)
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