二階幹事長で「保岡流」を封じこむ
一番うろたえているのが自民党憲法改正推進本部長の保岡興治氏ではないか。保岡氏は、党や国会で憲法関連のポストを歴任し、野党とのパイプも太いが、それ故、野党との議論を重視してゆっくり積み上げようという考えだった。その「保岡流」に安倍氏は不満だった。
連休明けの12日、保岡氏と会った安倍氏は、年内に自民党案をまとめるようクギを刺した。保岡氏自身は「保岡流」にまだこだわりがあるようだが、外堀は埋まった。推進本部には二階俊博幹事長ら党三役全員が顧問に就任。ある自民党幹部は「安倍氏が送り込んだ監視役のようなもの。保岡氏は不本意だろうが、本部長を更迭されなかっただけでもよかったと思わなければ」と解説する。「安倍改憲」にアクセルを踏み込む体制が整った。
「年内に自民党案」「20年施行」
安倍氏が描くスケジュールをまとめると、
(1)年内に自民党案作成
(2)2018年に衆参両院で3分の2以上の賛成により発議
(3)2019年に国民投票
(4)2020年に施行
となる。この日程は、まさに安倍氏の都合のいいようにできあがっている。
「20年施行」は、同年に東京五輪があり「日本が動きだす年」だから、ということになっているが、これは後付けの理屈だ。安倍氏は来年の党総裁選で3選を勝ち取り、21年まで総理・総裁を務めるつもりでいる。その在任中に確実に改憲を実現するために前年の20年に目標を置いたのは間違いないだろう。
「年内に自民党案」も、安倍氏のための日程といっていい。来年の総裁選は、安倍氏の勝利が確実視されてはいるが、岸田文雄外相、石破茂元幹事長らの出馬も予想される。党の改憲案がまとまっていない状況で総裁選に突入すれば憲法観が争点となり、党が割れている印象を与える。安保・憲法に詳しい石破氏に論破されることもあるかもしれない。それを封印するために「年内」に決着させてしまい、翌年の総裁選を消化試合にしてしまおうという考えではないか。