このわずかな違いが天国と地獄の分かれ目
部長であっても定年後、1年更新の非正規社員として再雇用されるのが一般的だ。しかし実状は、子会社の役員に潜り込み、高給プラス役員退職金まで貰う人もいれば、かたや現役時代の半分の給与で一兵卒として働く。まさに天国と地獄である。
子会社の役員ポストは激戦区で、射止める人は、本社の実力役員の側近が少なくないと指摘するのは建設関連会社の人事部長だ。
「あの人は部下の行く末も考えてくれる、あの人に付いていれば老後も安泰だぞと言われる役員がいる。その役員は有力子会社に影響力を持ち、子飼いの社員を役員で送り込む仕組みをつくっている。子会社の役員ポストを狙うにはそういう役員に近づき、気に入られるのが近道です」
しかし、役員に尻尾を振ってもポストが転がり込んでくるほど甘くはない。ポストを奪うには現役時代から周到な仕掛けも必要だ。
ある食品会社の営業部長は、56歳のときに、子会社の加工食品会社と共同で、カット野菜の販売事業を立ち上げた。創設当初から、製造方法など子会社のやり方に口を出すようになったという。そのうち自分の部下を子会社の課長として出向させるなど、親密な関係をつくり上げた。そして、本人も部長職の役職定年の58歳になる直前、その子会社に常務として乗り込むことに成功したのである。
同社の人事部長は「本社の役員への芽がないとわかっての極めて巧妙な手口だ。表面的には本社事業部と共同事業と称して、自分のポスト狙いで画策する手口はたまにある。ここまで仕組まれては、人事も口出しできないのが現実」と語る。優良子会社の役員になれば、月給と賞与の合計で年収2000万円。10年勤めれば、役員退職金も約2000万円貰えるというから驚きだ。