「親の言動で、子どもは他者を責めるようになる」

(3)のような状態は周囲に次第に伝染し、結果的に、「荒れるクラス」を作る要因となるのです。ここで大いに気になるのは、「私はいいけど、周りのみんなはダメ」と他者を攻めるメンタリティがどのように形成されるのかということです。

私は、それについて、これまでの教員経験や教員対象の勉強などによってある仮説を持っています。それは「親の言動が、子どもを他責的な傾向にする」というものです。

例えば、食卓での話題で、読者の皆さんの家族間ではどんな発言が飛び交っているでしょうか。他責的な発言がありませんか。

テレビを見ながら親御さん自身が、画面に登場する人々や社会に対して、オブラートに包まない言葉で批判や罵倒をしていないでしょうか。また、親が子どものクラスについて「○○くんは悪い」「○○先生はダメ」といった発言をしていないでしょうか。

そうした「自分以外の他人が悪い」というネガティブな考えを子どもの前で示せば、その子どもも同じような発想になります。親自身は悪気のない雑談のつもりが、子どもの心理を歪ませてしまうことがあるのです。その結果、我が子が学級崩壊の原因になったり、学校に嫌気がさして不登校になったりします。その素地を家庭内で親が自ら作っているようなものなのです。

クラス内のことに関して問題意識があれば直接担任に言うべきで、子どもの目の前で言うのはおすすめできません。同様に、他のご家庭の子について悪く言うことは「百害あって一利なし」ということになります。

我が子が荒れるクラスをつくる原因になっていないかどうかより、まずは親自身が自分の言動を適切に見極めることが重要です。

4.まず「周りがきまりをきちんと守る」と思わせる

「周りの人が決まりを守らないから、自分も守らない」という「他責」タイプの子どもの心理をもう少し深堀してみましょう。

子どものこうした考えは身勝手といえますが、ある意味“筋”は通っています。しかし、前述したようにそうした子が多いと、「ならば自分も守らなくていい」と考える子を増やす可能性があります。

「荒れているから、周りの人がきまりを守らないと認識している」

これを、逆手にとって家庭教育に利用します。

つまり、本人はさておき、「周りがきまりをきちんと守っている」と認識できれば、「クラスが落ち着く」という結果が得られることになります。規範意識については個人に着目しすぎずに、集団として見る必要があるということです。

「通学路の信号を守る」ということを例にして考えてみましょう。

みんなが互いに「信号を守らない人が多い」という認識をしているとします。この場合、規範意識の法則によれば、どんどん守らない人が増えることが予想されます。

普段の生活や道徳の授業で、「信号を守ることは命を守ることなので大切です」と言ったり書いたりしても、全く意味がありません。本音の伴わない「良い子ちゃん発言」は無意味です(無意味だが、別に悪いことではない)。親や先生がどう言えば喜ぶかを読むようになったら、逆効果ですらあります。

素晴らしい言動があっても、その子供が急いでいる時に赤信号で渡ってしまうことは十分考えられます。それなら「習い事があって急いでいる時に、つい渡っちゃうことがある」と言う方が本音です。

つまり、前提として「自分も守れていない」という認識に立っての話し合いが必要です。
「実は、お母さんも守れていない時がある」という本音をきちんと話すことが大切です。