数学リテラシー世界1位は“ニセモノ”か

これは2国の比較ですが、世界全体の構造図を描いてみましょう。横軸に男子、縦軸に女子の数学嗜好スコアの平均点をとった座標上に、調査対象の65か国を配置してみました。図2をご覧ください。

日本は左下にあり、男女とも、15歳生徒の数学嗜好が世界最低レベルであることが分かります。「そうだろうな」とは思っていましたが、統計にてハッキリと「見える化」されてしまいました。

対極の右上には、先ほど比べたインドネシアの他、旧共産圏や発展途上国が多くなっています。国力増強のため、科学技術教育に本腰が入れられているのでしょう。理系人材が厚遇されるため、生徒のインセンティブが強くなることも考えられます。

ジェンダー差をみると、やはり女子よりも男子が数学を好む社会がほとんどです(斜線より下)。しかし、その逆の社会も少数ながらあります。マレーシア、カザフスタン、インドネシア、アイスランド、ルーマニアでは、女子の数学嗜好が男子よりも高くなっています。

理系教科の成績が女子より男子でいいのは、そもそも「脳のつくり」が違うのだから致し方ない。こういう論がありますが、「男子<女子」の社会も存在することから、そればかりを強調するのは間違いでしょう。人間は社会的動物で、発達の様は社会によって違うし、意図的な働きかけ、すなわち教育によってそれを変えることもできる。これは希望的事実に他なりません。

さて、今回のデータをどうみたものでしょう。ご存じの通り、わが国の生徒の数学力は国際的にみて高い水準にあります。先日公表された「PISA 2015」の結果によると、日本の数学的リテラシー(習熟度など)の平均点はOECD加盟国ではトップです。

しかし悲しいかな、それに「関心・意欲・態度」が伴っていない。きつい言い方になりますが、試験や大学受験という外圧がなくなった途端、メリメリと剥がれ落ちてしまう「偽」の学力なのかもしれません。

次期学習指導要領では、知識を原理的なレベルから分からせる、その有用性を認識させる「アクティブ・ラーニング」に重きが置かれることになっています。変動の激しい時代で重要なのは、新たなことを積極的に吸収していく「関心・意欲・態度」です。

いよいよ本格的に、こういう方向に舵が切られることになりました。今年は、教育界にとって大きなターニングポイントの年となることでしょう。

(図版=舞田敏彦)
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