「経営陣が開発現場を把握していなかったのは大きな問題。開発部門は部長から副社長まで5階層もあり、情報が上がるまでに時間がかかっていた」。三菱自動車の山下光彦副社長は、長年にわたり不正が見抜けなかった同社の企業風土をこう分析する。山下氏は燃費データ改ざん問題で揺れる三菱自の開発部門立て直しのため、資本提携を決めた日産自動車から派遣された人物だ。
山下氏は京都大学大学院航空工学修士課程修了後、日産に入社。電気自動車「リーフ」の車両開発など、一貫して研究・開発部門を歩む。若手時代に米マサチューセッツ工科大学留学や北米日産テクニカルセンター駐在などを経験。こうした経歴からカルロス・ゴーン体制において研究開発拠点の世界展開を推進し、グローバル体制を構築してきた。2年前に9年間務めた日産副社長を退任後、同社技術顧問として若手技術者の指導育成などに努め、自動車技術会の会長も歴任した。自動車の安全・環境技術向上などに取り組んだ功績が評価され、今春に藍綬褒章を授与された。悠々自適の“第二の人生”を踏み出そうとする矢先、白羽の矢が立った。
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