パソコンのさまざまな設定から使い方の説明までをカバーする「パソコンのサポート」。あまりデジタル機器に詳しくない向きや、遠隔地に住む老親を持つ人には一見頼りになりそうなサービスだが、このサポート契約をめぐるトラブルが最近大きな話題を呼んだ。
問題となったのは、パソコン量販店PCデポを運営するピーシーデポコーポレーションが提供する、月額制の「プレミアムサービス」。認知症を患う80歳過ぎの独居老人を相手に、同社の支店が、不要なオプションも含めて実際の使用状況にそぐわない月々約1万5000円のサポート契約を締結。気がついた親族が解約を申し出ると、当初20万円以上の解約料を請求されたという(実際に支払ったのは10万円強だが、それでも高額だ)。
複雑でわかりにくい契約内容、商品価格とサポート代金の区分のあいまいさ、3年間もの長期の「縛り期間」と高額の中途解約料、契約時の説明不足など、PCデポのトラブルは販売店のモラルが大いに問われるケースというほかない。その背景には、モノを売るだけでは利益を確保するのが難しくなった家電量販店が、「月額契約ビジネス」に走っているという現状がある。
PCデポに限らず、今やほとんどの大手家電量販店では、白物家電を買いにいっても、光回線サービスの新規契約や乗り換え、宅配飲料水の契約を持ちかけられる。こうした月額契約を1件取ることができれば、ときには数万円にのぼる販売奨励金が外部の業者から入ってくるからだ。
PCデポはこの図式をさらに進め、店頭のあらゆる商品に自社の月額制サポート契約を乗せて、利幅を確保しようとしていた。無料で契約を解除できるのが縛り期間の最後の1カ月だけで、その月を逃すとまた3年契約が自動更新される規定など、店側にすれば売り上げが立ってハッピーだろうが、客の側にメリットはない。サポートの問題というより、月額契約ビジネスの問題点が浮き彫りになった事例といえる。