16年前の法人化を機に、みかんの生産のみならず加工や販売を含めた6次産業化に取り組む早和果樹園(和歌山県有田市)。急斜面でのみかんづくりは決して楽ではないうえに、働きやすさや条件も一般企業と比べて恵まれているわけではない。しかし、近年は新卒学生の興味が高く、地元の合同会社説明会ではブースに長蛇の列ができるほどの人気だという。学生を惹きつける職場の魅力はどこにあるのか。後編では、販売まで手掛ける理由や海外展開、人材確保の取り組みについて聞いた。
自社ブランド販売へのこだわり
――現在は、加工品を大きな軸として取り組んでいらっしゃいますが、農家にとっては1次産業から2次産業へ、つまり生産から加工にも事業を広げるのか、さらに3次産業である飲食や小売にも参入するのか、というのは大きな論点ではないかと思います。秋竹社長は、事業領域をどのあたりまで広げるのがいいとお考えですか。
【秋竹】私たちは、小さいながらショップも運営しています。自分たちでつくって、売るところまでやっています。今後はネット販売をより強化していきたいと考えていて、6次化をさらに進めていこうとしているところです。
以前は、うちで絞ったジュースを、他の加工業者に原料提供したこともありました。でも、原料提供は利益があまり望めないんです。ある年には「これだけ欲しい」と買ってもらえても、相手の都合でその1年で終わってしまったこともあります。(自分たちの計画どおりに行かないことも多く、)原料提供は慎重にやらないといけないとも感じました。結局、自分たちのブランドで販売することが重要だと思っています。
――海外にも積極的に進出されています。特にアジアの台湾や香港などで、高級スーパーとタイアップの実績も上げられています。ただ、グローバル化については生産者によって意見が分かれるところではないかと思います。海外展開は手間暇がかかるからやめたほうがいいという意見もあれば、国内マーケットが減少傾向に向かうなか、生き残りのためには外に出ていくべきだという意見もあります。
【秋竹】やはり国内の人口が減ってマーケットが縮小していくわけですから、新たなマーケットを求めて海外に出ていくべきだというのが私の考えです。だから積極的に海外に出ていく。というよりも、それに輪をかけて、うちの営業部長が海外に行くのが好きなんです(笑)。この頃はしょっちゅう海外に販売に行ってますね。
国内で売る場合、私たちは観光地である白浜温泉や、近場では黒潮市場、お伊勢さんのおかげ横丁などで毎週のように試飲販売を行っています。自分たちの商品を広げようと思ったら、やはり知ってもらわないといけません。海外の場合も考え方は同じで、要請があれば香港、台湾、シンガポールにも行きます。現地で試飲販売したら、売上がぐっと上がります。向こうの人たちもうちの商品を大事に売ってくれますしね。そうやって国内同様、海外でもかなり広がりがでてきています。