「独り立ち」よりも難しくて大切なこと
アメリカ大統領選挙でドナルド・トランプが勝ち、「アメリカは世界の警察官をやめる」や「米軍駐在費の負担を日本に求める」などの発言から、「日本が自立するときがきた!」などと言われるようになりました。
トランプがこれらの方針を実行するかは別として、日本人の多くが、日本の軍事力や、自分たちで国を守ることができるように「独り立ち」することについて少しは考えたんじゃないでしょうか。でも僕は、トランプ当選によって突き付けられた本当の問題は、日本の「自立」ではなく、「自律」であると思っています。
「自立」と「自律」の違いについては、以前も書きました(http://president.jp/articles/-/17752参照)。僕の解釈では、ざっくり言うと、「自立」は人の援助を受けずに自分の力でやっていける、ということです。例えば就職しても親元で暮らしていた若者が、「就職したんだから、そろそろ自分で家を借りなさい」と親から言われ、自分の稼ぎで部屋を借りたり、家事などをこなしたりするようになる。これは「自立」の問題です。
自分で稼いだお金に余裕があるなら、家事が苦手でもハウスキーパーを雇えばいい。しかし、「親元を離れる」ことで考えるべき問題は、もっと別のところにもあると思います。そもそもどこに住むのか、新しい場所での近所づきあいなどはどうするのか、冠婚葬祭などはどうすればいいのか、親に任せてきた諸々の契約などはどうするのか、そして自分の新しい家族は……。これまで親に任せていた社会との関わりや運用のいろいろな問題について、自分で考えて方針を決め、周りと交渉したり調整したりしていかないといけない。これが「自律する」ということです。自分が置かれた状況を客観視して、それを受けいれたり取りいれたりしながら、自分のスタイルをつくっていくことが求められます。
日本がトランプ当選によって突き付けられた問題は、単に力をつける、強くなるということではなく、国が置かれている状況やこれまでの背景などを理解して、周りの国や世界との付き合い方や、今後のポリシーなどを考えるということなんだと思うのです。これは、「独り立ち」よりももっと難しくて大切なことです。