「鯖江市役所JK課」仕掛人の若新氏と、「よのなか科」を創設した藤原和博・奈良市立一条高等学校校長の対談最終回。先生と生徒、上司と部下――立場を越えてともに成長していくために必要な互いの「信頼関係」をどのように築いていけばよいのか。両氏が実践するユニークな方法を紹介する。

「信任」が与えられる場

【若新雄純】「JK課」について取材を受けたとき、記者さんがメンバーたちに「若新さんのどういうしぐさや行動がいいですか」という質問をしました。卒業生の一人が、「どんな発言にも『いいね!』ってすぐ言うんです」と答えてくれました。

確かに、僕は彼女たちのどんな発言にもすぐに「いいね!」と言います。アメリカの臨床心理学者に、「人には自己成長力がある」と提唱したカール・ロジャースという人がいます。若者と接するプロジェクトでは、常に一人ひとりの「自己成長力」を信じて、発言や行動を尊重し受容するところから始めようと決めています。

学校の先生みたいに、ダメ出しされたり指摘したりしても、彼女たちはやる気が出ないと思うんですよね。楽しくならない。ただ、僕の「いいね!」は評価ではないんです。あくまで、みんなが自由に発言しているという行為を尊重してるというつもりです。

【藤原和博】若新さんが「いいね!」と言い続けることを、僕の言葉では「信任」と表現しています。「あなたに任せます」というもの。僕が考える「信任」とは、他者から与えられる「信頼」と「共感」の総量です。ちなみに「信頼」は理性的なもので、「共感」は感情的なもの。この両方の総量である「信任」をどれだけ増やすことができるか。いま僕と若新さんの間で交わしている会話も、お互いの信任を増やしていかなければ、おもしろい方向には行かないでしょ。

【若新】なるほど。僕が受けた学校教育では、100点に近いだけ「いいね」と言われました。でも、これは理性的で客観的な評価や信頼にしかならない。先生と一緒に「おもしろい!」「もっとやりたい!」といって楽しんで何かを取り組もうという気持ちにはなりませんでした。

【藤原】信任されるとうれしい。これはJK(女子高生)であろうと中学生であろうと同じです。でも、信任される場がいままでの教育現場にはあまりなかったように思います。