失敗にもロイヤリティを

若新雄純(わかしん・ゆうじゅん)
人材・組織コンサルタント/慶應義塾大学特任助教
福井県若狭町生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程(政策・メディア)修了。専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や女子高生が自治体改革を担う「鯖江市役所JK課」、週休4日で月収15万円の「ゆるい就職」など、新しい働き方や組織づくりを模索・提案する実験的プロジェクトを多数企画・実施し、さまざまな企業の人材・組織開発コンサルティングなども行う。
若新ワールド
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【若新】若者が減点法に縛られて、とにかくミスを減らそうというマネジメントのなかでは、当然、企業の中の活動エネルギーも下がるし、新たな発見も生まれにくくなると思います。

【藤原】「叱られない」ことがすべての動機、というのはよくないですね。減点主義の教育がどういう子どもをつくるかといえば、「失敗したくない」「叱られたくない」「恥をかきたくない」と萎縮する子どもです。成熟社会になれば、本来は多様化が図られるはずなのに、減点を恐れるあまり、みんなが逆に一様になってしまっている。学校や家庭で信任をどう増やしていくか――。これを真剣に考えていかないと、必ず行き詰まると思いますね。

しかも、本来は組織的なしがらみを崩す役割だったはずのネットワークやSNSの世界が、今度は「いいね!」に縛られ始めている。「いいね!」欲しさに他人の顔色を伺うというか、「いいね!」減点法みたいなものが幅を利かせている面が日本の場合はあります。

【若新】「いいね!」ボタンは本来、一人ひとりが自由に発言できるということに信任を与えるためのものポジティブなものだったんだと思うのです。それがいつのまにか「評価」になってしまった。投稿しても「いいね!」をもらえないような内容はやめていこう……。これでは本末転倒です。僕たちがこの思考の硬直をなくしていくには、どうすればいいのでしょうか。一時、「ガリ勉はダサい」という風潮があったように、「正解ばかり求めるのはダサい」というような風潮が生まれるといいんですかね?

【藤原】そうですね。社会や大人の価値観で勝手に正解・不正解を決めて一方的に評価をするのではなく、「わけのわからないこと」にも信任が与えられないと、ね。

【若新】「よのなか、正解を出したときのロイヤリティは少ないのに、失敗したときに受ける損失は大きすぎる」って誰かが言ってました。それだと、「なにもしない」が一番賢いことになる。発言や行動そのものが信任され、失敗したときもロイヤリティが与えられるようになれば、学校や会社ももっとおもしろくなりますね。

(前田はるみ=構成)
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