内閣支持率の低下と連動するように安倍晋三政権の歯車の狂いがあらわになってきた。迷走する野党再編のおかげで、国内では「一強多弱」状態に変化は見られないものの、冷厳な国際情勢に目を向けると、その傾向は一目瞭然だ。かつては拉致問題への取り組みから「外交の安倍」とも呼ばれた首相だが、遅々として進まぬ北朝鮮問題をはじめ中韓両国が築く反日包囲網、ロシアの対日強硬姿勢や暗礁に乗り上げるTPP交渉など、安倍政権の外交は「大敗北」の様相を見せている。

北朝鮮、韓国、中国の「日本外し」が加速

「こんなはずではなかったが、ここが試練のとき。何とか潮目を変えなければ……」。岸田文雄外相が「北朝鮮による拉致被害者の再調査結果時期は期限を設けない」と表明した9月1日、安倍首相の側近は苦悩に満ちた表情を浮かべた。日本と北朝鮮が再調査開始で合意したのは昨年5月。権限ある特別調査委員会が立ち上がり、その調査期限は「1年程度」になると発表して国民の期待を集めた。だが、北朝鮮側は今年7月に報告の先送りを通告し、いまだ日本側には「進展」と呼べる情報も入ってきていない。

地球儀を俯瞰する外交は、むしろ日本包囲網を形成する結果に……。(時事通信フォト=写真)

外務省は外相、事務次官、アジア大洋州局長と担当課長の4人しか情報を共有しないピリピリムードが漂っており、外務省幹部の1人は「北朝鮮は安倍政権の動向をよく分析している。今後1年は様子を見てくるだろう」と語る。当初、日本側は特別調査委員長を務める徐大河・国家安全保衛部副部長に大きな権限が付与されていると見ていたが、金正恩体制下の権力構造は複雑で「徐氏の背景を見誤った」(政府関係者)との声も漏れる。8月に緊張が高まった朝鮮半島では、韓国との協議に北朝鮮が金第一書記の最側近である黄炳瑞朝鮮人民軍総政治局長を出席させており、日本との対応の違いが際立っている。